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アウシュヴィッツ・レポートのyukarinのレビュー・感想・評価

4.3
生き延びるためではなく、伝えるために

映画は、一般的には娯楽なのだろうと思う。そういう視点で言えば、この作品は間違いなく、一般的な映画ではない。

そこに描かれるのは、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所のリアル。
今まで映画などで描かれてきた強制収容所とは明らかに異なる。囚人と呼ばれる収容者や、誰かほかの主人公、そういった存在の主観も、感情も入り込まない。そこには、効果音や同じ役割を担う音楽もない、まるでドキュメンタリーのように、そこに起きていただろう現実が展開していく。

全編を通して、非常に重苦しく、心に重りのようにのしかかってくる。
それでも、観たことを後悔させない作品でもある。
エンドロールで流れる音声が、まだ続く悲劇に気づかせる。ホロコースト自体は過去になったかもしれない、けれど、過去が繰り返される危険性はまだまだ潜んでいると訴えかけてくる。
イントロダクションの言葉が、エンドロールとともに、ずしんと再び頭に刻まれる。
「過去を覚えていない人は、過去を繰り返す運命にある」
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