ダイセロス森本

エスケーピング・マッドハウスのダイセロス森本のレビュー・感想・評価

3.4
10days in a mad house 的なタイトルで売り出された実際の本と記事がベース。
記憶を失い自分の名前しかわからない彼女がなぜここにいるのか、どうしてまともなはずなのに精神病棟にいるのか そしてその病棟の実態を知ることになる恐ろしい映画・・・なのだけれど

ネタバレありで考えてみる(以下ネタバレあり)


まずこの女性、ネリーは突然記憶のないところからスタートして、自分が何者かを医者と一緒に考え思いだそうとする。
医者に変な愛情を注がれている彼女は寮母のサイテーな働きを訴えているけれど、ここで少し疑問が残った。
彼女はたった10日間しかこの施設にいない。しかし寮母は数十年とこの施設を回している。少ない数のヘルパーとともに「いかれた」人たちを治療している。その治療の方法が間違えているのは確かだけれど、彼女がこの施設を守り、精神異常者たちを清潔に保ち、食事を与え、寝床まで用意して身の回りのケアを行っていたことは紛れもない事実で、彼女がいう通りここに収容されている人たちのほとんどがもし彼女の助けを得られなかったら今頃もっと酷い目に遭っているかもしれないのである。
ネリーにしたことは確かに間違いであり、大きな犯罪ではある。医者も然り。
しかし、ネリーは全てを暴ききれたか?というと、分からない。

寮母のおかげで生活ができるようになっていた人たち、外で生きていけない人たちはこの後どうなったのか。
孤島で生活するケアギヴァー側の対策に何か有効なものはなかったのか。

もちろん精神病だと判断されて収容される人の中にはまともな人もいたはずだし、現状そういう人もいるはず。そして必要な気づきをもらえずにいる。何かが変わるには必要な一幕だったとは強く思うけれど、この映画では「向こう側」が圧倒的に悪として書かれていたから少し違和感。