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キラー・セラピーのASAのレビュー・感想・評価

キラー・セラピー(2019年製作の映画)
3.6
超重くてダークでかなり見応えのあるサスペンス。
両親から愛されたひとりっ子のブライアンは養子に迎えられた妹に強烈な嫉妬心を抱く。ひょんなことから友人を事故死させてしまった彼はセラピー治療を受けるがセラピストにレイプされ、そこから人生の歯車が大きく狂いだす。
母との車内のシーンはマジでキツ過ぎて観ていられなかった。ショッキングすぎる出来事があったわりに、ブライアンにあまり変化がなかったことは違和感を覚えた。悪に振り切るシークエンスもはっきりと描かれていないことも気にかかる。彼はまともに生きようと努力はしていたわけで、良心を捨てたカットはインサートした方がよかった。役者も表現にもう少し頑張れる余地があったと思う。
人に優しくしたくても、周囲の人間や環境がそうさせてくれないもどかしさに同情心が募る。近付きたくても人を傷つけてしまう姿にシザーハンズを連想させる。徐々に悪に染まるシークエンスはゴールデンボーイっぽくもある。けど、彼の場合は理不尽なまでに不幸なことの連続で悪い結果が出てしまった。後半の復讐シーンは悲しい気持ちで彼を見ていた。大抵の復讐モノはラストで鬱憤を発散させる清々しいものが多いが、本作は全くそんな気持ちにならなかった。それだけまじめに作られた作品ということだろう。
実際の殺人犯もこういった背景を持つ人はおそらく多くいると思う。行為自体は悪であることに違いないけど、彼らを見る目が変わるかもしれない。
そして、タイトルにもあるセラピーって個人的に馴染みがない文化だけど監督は批判的なのだろうか?作品内では根本の問題はここにあったけど、欧米ではどう捉えられてるんだろうか。
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