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茲山魚譜 チャサンオボのプーのレビュー・感想・評価

茲山魚譜 チャサンオボ(2019年製作の映画)
4.2
近海に欧米の船がうろうろしはじめた朝鮮王朝後期、黄海寄りの孤島に島流しにされたキリスト教背教者の高官と漁師の青年の交流から生まれた魚類総覧書の話 今年見た中でいちばんたくさん海の生き物が出てくる(そして食べられる)映画だった エイにイカにタコにタイにサメにムツゴロウ

西洋文化と中国古典の衝突、日本の脅威、琉球や呂宋国の存在感など、モノクロで描かれる小さな島の話ながら当時の朝鮮をめぐる情勢が浮かび上がるし、国政と地方行政の腐敗が主役二人それぞれの身の回りに描かれて鮮やかだった そしてキリストのように漁師を弟子にする話だった

ヤクチョン先生がチャンデ青年から聞き取る魚介類のエピソードがいちいち面白くて、そんな観察しながら魚取ってたんかと思うし、二人で船に乗って魚を釣るところはロマンチックかつ寓話的 成長したチャンデがお寺で漢詩勝負に挑む場面はさわやかで美しかった モノクロなのに色鮮やかな映画だった

なんのための政治、なんのための学問かという芯がしっかり通っていて、かつ、ひたすらタコのスープやアンコウ鍋やエイのさしみが美味しそうなので、モノクロで命拾いした カラーだったらまっすぐ魚介食べれる店に突入してた

強く深く主題を掘り下げた歴史劇のよさと、学者と漁師のワクワクおさかな天国の楽しさが交互に甦って情緒がめちゃくちゃになる
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