がんびーの

マルコム&マリーのがんびーののレビュー・感想・評価

マルコム&マリー(2021年製作の映画)
3.6
深夜に建設的な口喧嘩ができるわけない。

映像の雰囲気も音楽も構図も光も、どれをとっても最高級。コロナの自粛期間中に撮ったらしいけど、アーティストにとっては厳しいであろうあの期間を逆手に取り、全編家の中だけでの撮影に踏み切ったスタッフ及び俳優陣(二人なんだけど)に脱帽。冒頭からの長回しや鏡の使い方、会話の立場に応じた役者の配置など、センスあるなーってシーンばかり。白黒にしたことで表情が掴みやすくリアリティが増してたのも良かった。

ただ、会話に6割くらいしか感情移入できなかったのが歯痒い。どちらかと言うとマルコムの意見は理解できた。それに対してのマリーの意見もわかった(マルコムがナルシスト気質&マリー自身自分にそこまで自信がないので、自分が彼に相手にされて無いんじゃないのかという不安からくる当てどころのない怒り的なもの)。でも、僕的にマリーが冒頭から言い続けてた「映画の主人公は私をモデルをしているのに、あなたはあたかも自分が作り出した物のように主張するし、私との生活からインスピレーション得たくせに、私にお礼ひとつも言わないじゃないか」と言う意見が完璧に腑に落ちなかった。御最もだし言い分もわかるんだが、じゃあどうしろと?って言いたくなる。

お礼を言って感謝をして、それでマリーの気持ちは収まるのか。恐らくマルコムがこの先、映画監督として生きていくとして、絶対に同じような状況に何回も陥ると思う。マルコムの創作にマリーが自身の影を見つけ、というか自分と重ねて(勿論マルコムの映画にマリーの影響は出るだろう)、監督であるマルコムと彼氏であるマルコムをごちゃ混ぜにして、結局「彼の創作物には私への愛がない=彼は私を愛していない」と言う思考回路を形成するのではないだろうか(てか既にしている)。もしかすると、その解決することのないすれ違いがこの映画の趣旨だったりするかもなので、案外マリーの言い分が腑に落ちなかったのは正解なのかも。女性はこれを見た時納得するのかな時になった。

マルコムは散々名前が上がってたスパイク・リーと彼のお父さんをかけてるのかな。

すぐ謝る大人になろう。
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