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アメリカン・ユートピアのとのレビュー・感想・評価

アメリカン・ユートピア(2020年製作の映画)
4.0
アメリカ=『資本主義・民主主義・移民国家・獲得的な幸福・銃社会』を、
主演のオジサン(全然知らない人なので敢えてそう呼ばせてもらいます)が音楽活動をしていく中で感じたことによって表現している作品

なのだが、歌詞の中に具体的な固有名詞を極力用いることなく、教育的になりがちなテーマを上手く抽象化し、芸術・エンターテイメントとして昇華していると思う。

1曲目から、脳→視覚・嗅覚などの五感→個人→他人との繋がり→国家と、曲を経るごとに世界が広がっていき、演者の人数も増えていく。国家のような社会集団は結局個人個人の考えの集合体であり、多様な人との関わりが彼の人生を豊かにしてきたことが伝わってきた。

その後テーマは少しずつ具体化していき、テレビに始まり、建物、車、カネ、移民、政治などのワードがよく出てくるようになる。アメリカやヨーロッパが世界中に伝播させていった強烈な資本主義、その視点から考えたユートピア(モノ・カネ・情報が豊かであることを目指すアメリカの人々)を、個人の日常生活の観点から表現していたのがロックらしくて面白かった。

モノやカネ、個人の利益にとらわれがちのアメリカ人だが、1番大事なのは他人との繋がりだという最終的なメッセージも、これからを生きる人々の教訓として素晴らしいと思った。協調性を重んじる日本人が見ると余計に共感できる部分も多かった。
視覚効果もスタイリッシュで、限られた材料の中で多様な表現をしていてすごかった。
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