柏エシディシ

アクアマン/失われた王国の柏エシディシのレビュー・感想・評価

アクアマン/失われた王国(2023年製作の映画)
3.0
面白かった。ちょっとアホっぽいけれど、コミック映画ってこんなモンで良いんじゃない?本来。
紆余屈折、迷走しつつここまできたDCEUも、やっとここにきて「ザ・フラッシュ」といい、良作が作られてきたのに店締まい。残念。
ブルービートルも日本じゃビデオスルーだし。
本作もキャストのスキャンダルや製作方針の転換など、監督をはじめ現場の苦労が滲むが、それでもちゃんとこのレベルのエンターテイメント映画として仕上げてくるジェームズ"剛"ワンには畏れいる。
ちょっとC3POっぽいTOPOちゃんや、海中カンティーナなんかを見るにつけ、何だったらスターウォーズやらせてみれば…なんて思っちゃった人は少なくない筈。

特に今回関心したのはビジュアル面で、往年の海洋SFを思わせるレトロフューチャーなマシンやガジェットに子供心をくすぐられる。
映画の前半なんかは、どちらかというとアトランティス側よりチーム:ブラックマンタを心なしか応援してしまうくらいに肩入れしちゃってみていた。"絵"が好き過ぎて。
X星人みたいな古いダイバースーツを思わせる揃いの戦闘服とか、ハンマーヘッド型潜水艦もあのやたらと広くてカビ臭さそうな指令室も、古いSF映画のセットを想起させられて、堪らない。
ジェームズ・ワンはキメのショトを作るのがいつも上手いと思うのだけれど、ブラックマンタのデッカい赤い目が立ち込める煙で、怒りの炎に燃えてる様に見えるところなんて、思わず声が出ちゃったもの。

まぁでも、映画としてはやっぱりところとごろ苦心の後は見えて、ソー/ロキを転用した様なプロットや終幕とラストの台詞など、ちょっとライバル会社を意識してアザといし、展開全般のインスタントぶりはツッコミどころ多し。
CGIの出来も場面ごとでバラつきがあるのもこの予算規模の作品では気になり過ぎるレベルだった。

ただ、「すんでのところで危機回避」や「武器を投げて空中キャッチしてキメるリオブラボーオマージュ」をやたらと劇中繰り返すのを見るにつけ、「みんな、これが観たいんでしょ?」というヒーロー映画の要請に率直でハズさない、って事なのかな、と。
難しい事はともかく、それでも温暖化やテクノロジーの功罪、兄弟愛という子供たちでもわかりやすいテーマに回帰する点もヒーロー映画として至極、真っ当。
最後の最後で、ようやくこの地点に来たDCEU。
あまり贔屓でもないくせに無くなるとちょっと寂しい飲食店の閉店みたいな、勝手な想いが湧いてきてしまう。
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