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こぼれるのtapitapiのネタバレレビュー・内容・結末

こぼれる(2011年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

悪質な人間性はこんなのです!というサンプルにふさわしい作品。

3人しか登場人物がいないのにもかかわらず、全員、悪意や無神経さ、攻撃性がにじみ出ている。

特に、主婦の早苗が言う『幸せだよ』と『聞いてから帰って』は声のトーンでわかる異質さがある。この作品が不気味であるのはこの早苗の醸し出す雰囲気のせいである。

なんせ、シチューに敢えて子どもを連想させるヘアゴムを仕込んでくるあたり悪質である。

しかし、夫、コイツも異質である。友人から『あの時勢いで付き合ってたら~』と言われ、自分の子どもらしき匂わせをくらっても、心当たりも責任もありません面で、ラストで取り乱す友人に『どうしたんだよ』と聞きながら平然とご飯を食べ続けている。お前は無関心がすぎる。

友人にいたっては、匂わせマウント女参上!という感じで一番わかりやすい。

ただし、どいつもこいつも悪意を立証できない程度、たしかにそうともとれるけど…という表現で踏みとどまっているのがニクイ演出である。

この3人の空気感、歪なのだが、現実でもこういう似たような空気感は見たことがあるなと思わせるナニカがある。

タイトルの『こぼれる』は、ワインがこぼれたように、さなえの感情がこぼれ、本音がこぼれ、最後には歪な笑みがこぼれるということなのかなと思った。
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