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暗くなるまでこの恋をの一人旅のレビュー・感想・評価

暗くなるまでこの恋を(1969年製作の映画)
5.0
フランソワ・トリュフォー監督作。

アメリカのミステリー作家:ウィリアム・アイリッシュによる1947年発表の小説「暗闇へのワルツ」をヒッチコックを敬愛するフランソワ・トリュフォーが映画化したサスペンスで、同原作者小説のトリュフォー監督による映画化は前年の『黒衣の花嫁』(68)に続き2度目となります。

アフリカ大陸の東に位置するフランス領レユニオン島で煙草工場を経営している資産家のマエは、文通で出逢った女を島に招いて見合い結婚するが、実はその女は文通相手とは全くの別人であり、マエの口座から大金を引き出したまま突然行方を晦ましてしまう。彼女への復讐心から南仏に飛んだマエは、ある時キャバレーで働いている件の女を発見するが―という恋愛サスペンスです。

謎多き絶世の美女と出逢った資産家の男が彼女に翻弄されていく様子を描いた一種の“ファムファタール物”ですが、美女の存在により身を滅ぼして終わる一般的な悪女物とは違って、本作は美女の身勝手な言動に散々翻弄されながらも、それでも彼女の幸せのために粉骨砕身し一途に彼女を愛し続ける男の性を描いた作劇となっていて、最後には本物の愛めいたもの(嘘か真か定かではない)に着地していく点が異彩を放っています。

罪を犯した訳あり美女と彼女のために罪を犯した男の風変りな愛の行方を自然豊かなレユニオン島&フランス本土を舞台に描いたサスペンスロマンで、ジャン=ポール・ベルモンド&カトリーヌ・ドヌーヴのフランス二大スターの競演が最大の魅力であります。
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