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モキシー ~私たちのムーブメント~のEDDIEのレビュー・感想・評価

4.8
本当の“平等”とは?
一方的に声を荒げるだけでは解決に向かわない。だから協力し合い互いに認め合う風潮が必要なのだ。
人間は不完全だからこそ主人公のように周りが見えなくなることはある。
そんなとき優しく諭してくれる存在の重要性を感じた青春映画の良作。

昨年2020年は『ハーフオブイット』や『ブックスマート』といったNetflix発の青春映画が高評価を勝ち取りました。

そして今年2021年は同じ土俵で語られる映画は本作『モキシー』ではないでしょうか。

クライマックスの本作で表現される一致団結のパワーは見ていて心地良いし、心を鷲掴みにされた気分。
鑑賞後の余韻としても凄くジワジワくるタイプの映画です。

作中で語られる『華麗なるギャツビー』を取り上げ、白人至上主義への対抗を表す転校生ルーシー(アリシア・パスクアル=ペーニャ)の存在と発言が大きな転機となります。
高校のクラスでも目立たない“アルプススタンドのはしの方”的な本作主人公のヴィヴィアン(ハドリー・ロビンソン)は、“モキシー=勇気”という死語を新たなブームとして甦らせる革新者となります。

そして、校内でブームとなり、「モキシーは誰だ?」が話題に上がりながらも、校内の男女平等とは思えぬ規則に反旗を翻し、様々な手段で抗議心を訴えるわけです。

勧善懲悪で白人男性を一方的に批判しているキライはあるのですが、それは一つのきっかけであり、ダメなものはダメと言える勇気を出すことの重要性を説いていると思うのです。
強いものに対して抑圧され、目を背けるか下を向くしかできない弱者たち。
本作では学校一の人気者でアメフト部のスター選手ミッチェル(パトリック・シュワルツェネッガー)が槍玉に上げられ、彼自身も抗議するシーンも出てきます。

もちろんミッチェル側からしたらある意味イジメみたいなものなんですよね。
だけど、彼が普段振る舞っている行動や本作のクライマックスで明かされる秘密は許されるものではありません。
彼のような権力者が弱者の声を揉み消すこと自体が社会ではまかり通っているだろうから、それに対して異議を唱える意味でも本作が作られた意義はあるのかなと。

キャラクターも愛着の湧くメンバーばかりで、お気に入りはセス(ニコ・ヒラガ)。『ブックスマート』でも、校内をスケボーで走りながら消火器振り回していた彼ですね。本作では主人公を優しく支えながら、時には厳しく諭す役割を担っており、本作をきっかけにさらに注目度が増すのではないでしょうか。
本作でヴィヴィアンが周りが見えなくなってくるなかで、彼だけは冷静に、そして彼女のことを思って見守ってくれていました。一種の潤滑油でもあり、清涼剤的存在でした。

ヴィヴィアンの親友クラウディア(ローレン・サイ)も素晴らしかったですね。中国系アメリカ人の彼女は家庭環境での苦労もあり、途中親友ヴィヴィアンともぶつかるのですが、その後の行動がかなり感動を呼びました。
仲直りまでの葛藤の描かれ方が浅いとは感じたのですが、あくまで彼女はサポートキャラと考えるとそこに尺は使えなかったのかなと。

ヴィヴィアンのママ役はエイミー・ポーラーで、本作の監督も務めています。
ボーイフレンドのジョン役が、MCUのコールソン役でお馴染みのクラーク・グレッグだったのは個人的にはアガりました。

とにかく一人のクラスでも目立たない少女が、あるきっかけをもって行動を起こし、新たな仲間と一致団結し、だけども親友や仲間との対立もあって紆余曲折を経験していきます。
最終的にどのような結末を迎えるか。昨年の『シカゴ7裁判』にも似た高揚感を感じました。

おそらく2021年の年間ベストの候補には入りそうな予感です。

※2021年自宅鑑賞49本目
※2021年新作映画26本目
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