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モキシー ~私たちのムーブメント~のハヤシのレビュー・感想・評価

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わたしはフェミニズムに対して、「女も男も含むあらゆる性の人が、それぞれの人々が生きる土台たる社会を良くするために、誰でも参加できるものであって欲しい」と期待している。誰もがそれぞれ自分たちのために誰でも望む社会を追求できる、その中にフェミニズムもある(またはフェミニズムがその全てを包括しうる)という状態が理想的だ。

この映画の世界はまさにそうで。フェミニストの男の子(セスだけじゃない!)もトランスの女の子も、その考え方に共感する人は誰でも参加できるモキシーはちょっと出来すぎなぐらい。

まず言わずにいられないのがセスのこと。フェミニズムへの共感が先かヴィヴィアンへの恋愛感情が先か明確ではないので「フェミニストの男の子」と表現するのがどうか分からないけれど、いずれにしてもよくできた男。あまりにもよくできた男であるのでこれっていわゆる都合の良い男じゃない?とも思うんだけど。それこそ数年後、数十年後に観たら今以上にここが引っかかってくる可能性はあるものの、これまで映画の中で描かれてきた都合の良い女の数を考えれば取るに足らないような数なので、現代においてはセーフと言っていいレベルだと思う。それよりそういう男の子が描かれているということの方がよっぽど重要。

この映画においてセスと並んで重要なのがクラウディア。結局は彼女も大胆な行動に出ることになるのだけどそれはひとまず置いておいて。自分ができる・やりたいと思う範囲で行動する、それも協力になるということを示したのがすごく良いなと思った。同じ目標に向かおうとするとき必ずしも皆と同じレベルで同じことをしなければならないというわけじゃないというのは、見落としてはならない視点だと思う。0か100かで考えて自分には無理だと手を引くんじゃなくて、自分にできることをやっていきたいなと思う。

ヴィヴィアンの台詞の「自分らしければいなんて母親のざれ言だよ」にはドキッとした。「自分らしさ」とか「ありのまま」って流行りの考え方だけど、実際のところそれだけじゃ生きられないみたいなところってある。そこで停滞しているわけにはいかないというか。

ラストのママとの会話「Thanks for inspiring me」「Same」の日本語字幕が「成長できた」「わたしもよ」になってるのはマジでそれで良いんか?

めっちゃブーブー言った気がするけど人生ベスト級の可能性、あります!
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