氷室甲斐

CUBE 一度入ったら、最後の氷室甲斐のレビュー・感想・評価

CUBE 一度入ったら、最後(2021年製作の映画)
5.0
CUBE観るならマトリックスでしょ派です。
それなのにCUBE観てしまったよ!

駄作、大爆死、低予算みえみえ、
リメイク失敗の手本、俳優ムダ使い…
低評価の嵐が吹き荒れてる中、
すっごい書きにくいんですが、
こっそり言わせてもらいます。

言わば「CUBEフォーマット」を使って
日本版にリフレームした進化形CUBE!
面白かった!です。
なんならまんまとトラップにハマって
感動してしまいました。

CUBE観て感動する?っ思うかもしんない。
けど、そういう人間もいるってことで、
この先読んでいただけるとうれしいです。

きっかけは会社の同僚が勧めてくれたこと。不純な動機の「吊り橋効果」狙いで
彼女を誘って初日に観に行ったとか。
もちろん、原作は観てない世代。

見終わった後、彼女さんから口を開いた。
「なんかドキドキする」
同僚は「吊り橋、キターッ!」
って思ったらしい。うん、わかる!
残念ながらそのドキドキは、
全然違うドキドキだったみたいで、
それからは映画談義が止まんなかったそう。
何度も一緒に映画に行ってるのに、
あんなに話が弾んだのは初めてだったって。

彼女さんのドキドキの正体は、
「自分があの中に閉じ込められたら
 どうしただろう」から始まって、
登場人物に会社の人間関係を当てはめて
観てたんだとか。
映画のトラップにハマってたんだね。

会社って、一度入社したらやめない限り、
ある意味CUBEだし。理不尽な目にあうし。
配属先ガチャ、上司ガチャ、同僚ガチャ、
担務ガチャ、取引先ガチャ、キリないし。
世界はCUBEのフラクタルの暗喩そのもの!
「身につまされる」ってこのことだよー。
宇野少年の決意のセリフが、
日々ジワジワ効いてくる。
自分が変わらないと何も始まらない!

あれもこれも書きたいことが沢山あるけど、
ネタバレになるしなー。
マトリックスのために貯めてたポイントで
CUBEに行ったわけだけど、
不思議とキヨキヨしい気分になって、
部屋の片づけが進みました!
手始めとして、着ない服、履かない靴、
使ってないポイントカードとか全部捨てた。
生きていくのに必要な物は驚くほど少ない。

CUBEを勧められても、
渋ってる自分に同僚は言った。
「お前にそっくりなエンジニアが出てる」
「え?誰」
「菅田将暉」
「行く」

で、どこがそっくりだったかと言うと、
(精神的に)傷だらけなところ、でした。
菅田君が○な○くて良かった、ホント。
(菅田君が演じてるエンジニア後藤の
暗算能力すげー。算盤やってたんかな?)
よく考えたら、無慈悲無惨な死に方と、
各人が抱えた問題がリンクしてた気がする。
CUBEは何もかもお見通しで、
これでもかと罠を仕掛けてくる。
自分の問題と向き合ったものだけが、
傷だらけになりながらも、出口へと近づく。

星野源さんのオールナイトニッポンで
ゲストの菅田君が言ってたけど、
CUBEの清水監督には、
このリメイク版は希望があるものにしたいと
いう信念があったそうです。

原作を知らない世代としては、さらに、
コロナ禍で閉塞感を味わった身としては、
ラスト数分間は色んな意味で刺さりました。
甲斐さんが宇野少年に語ったセリフも、
宇野君の決意も。

あと、これだけは言いたい!
甲斐麻子役の杏さん、
宇野少年を抱きしめた時の表情が
最高でした!

芸術体験と同じで、
映画鑑賞は絶対的価値ってことで、
自分にとってCUBEは、
ありがとうも込めて☆5つ!

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