金宮さん

パーフェクト・ケアの金宮さんのレビュー・感想・評価

パーフェクト・ケア(2020年製作の映画)
2.5
孤独シニアから財産を搾り取る悪徳法定後見人のドタバタ奮闘劇。

「奪う者と奪われる者がいるなら、奪う方を選ぶ」の冒頭モノローグ。誰もがどこかで聞いたことのある台詞。であれば相応の信念や、奪うことの葛藤を見せてくれないとなんですが、ダメでしたね。ラストも「あぁそうですよね」といった程度。

貧困やミサンドリー的なルサンチマンしか見えてこないので、その先の選択肢としての犯罪には感情移入できません。(ミサンドリーも極端で、女性エンパワーメント描写として逆効果に感じます)つまり、ダークヒーローになりきれていない。加えて、作品自体がそうであるように主人公も法定後見人スキーム頼りの一本勝負であとは腕っぷし。地頭の良さを感じず頼りない。

敵対マフィアどころか裁判官も、騙されるシニアも、とにかく全体的にお間抜けおっちょこちょいなので、クライムサスペンスのイージーモードといった感じ。

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冒頭モノローグ。自分はやっぱりウシジマくんを思い浮かべる。ウシジマくんは自らの上昇志向にとどまらない。アウトロービジネスで勝ち取ったパワーを資本主義からこぼれた弱者に少しだけ分け与える。しかもやんわりクールに。この辺にダークヒーローとしての深みがあります。

原作者の真鍋先生は現在、清濁併せ持つ弁護士モノ『九条の大罪』を連載中ですが、こちらも映像化必至の作品。高齢者介護ビジネスについても容赦なく描いていたので、既にニ、三枚上手の社会派ダークヒーローものを見ていたのも今作は分が悪かった。
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