Kachi

14歳の栞のKachiのレビュー・感想・評価

14歳の栞(2021年製作の映画)
3.8
中学生だった当時を反芻できる作品

春日部市の公立中学校2年6組の最後の50日ほどをドキュメンタリー形式で再構成した作品。35人の生徒が、進級を控えてどのような心境かが等身大の言葉で語られる。

感動のピークをどこかに持っていくことや、特筆するような事件を描くことはない。中学校という、私のような30代の「大人」からすれば過ぎ去った日々が淡々と描かれている。いわゆる涙を誘うシーンや憤りを覚えるシーンはなく、鑑賞者それぞれが思い思いの自分の中学生時代と重ねながら生徒たちを見守る体験をする作品なのだろう。その試み自体は、成功していると思った。

本人たちにとっては大きな問題であることが、すっかり大人になった人からすれば瑣末なことに過ぎなくなっている。ただ、当事者にとっては「今」がもっとも切実な瞬間であるし、だからこそ突き放さずに寄り添う教員の方々や保護者の方々の心労は計り知れないものだと思った。

少し興醒めだったのは、3度にわたって「作品を誹謗中傷しないこと」という注意喚起がなされていたことだ。もちろん子どもたちの人格否定に繋がる発言は厳として慎むべきだと思う。ただ、作品自体の未熟な部分までを言論統制してしまいかねないような表現ぶりであった。スコアの高さは、その再三の注意喚起が作り出した空気によるものだとすると、少し興醒めしてしまうのではないだろうか…?
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