Filmarksの試写会に当選したため、公開より一足早く観賞させて頂きました。
まるで近い未来を見たような映画
「愚行録」「蜜蜂と遠雷」の石川慶監督の最新作。
クラブでエマ(寺島しのぶ)と出会ったリナ(芳根京子)は遺体を生きたままの姿で保存できるボディワークスの仕事につく。そして、30歳の際に身体のまま生きる「不老不死」の施術を受けて人生を生きる物語。
昔よりもはるかに人間の寿命は延びており、「人生100年時代」と呼ばれている今も「不老不死」は人類の夢とされている。
そんな「不老不死」をテーマとしているのが『アーク』である。
生き続けられることが自由なのか、それとも限られた寿命の中で生きることが自由なのか。人はどうして不老不死を求めるのかを考えさせられた映画だった。
また、本作は冒頭のダンスシーンやボディワークスの作成、衣装の色合い、ある時代をモノクロで表されるなど非常に芸術性が高い映画だった。
特にボディワークスに関しては、火葬ではなく遺体をまるで生きた状態の躍動感をつけて存在を残し続けるボディワークスが不気味で違和感を受けていた。しかし、ボディワークスを当たり前とするアークの世界観を見ていると、次第に絵画のように美しい芸術のように見えてしまった。
SFとは科学的な空想をもとに作られたフィクションであるが、ボディワークスや不老不死などを温かい人間味を用いて表すことで、まるで数十年、数百年と近い未来を見ているかのような映画体験であった。
映画のラストのリナのセリフが見終わった後に、どこか胸に突き刺さり、自分だったらどうするかと考えさせる素敵なシーンだったので、ぜひ見てほしい。
17歳から100歳以上までのリナを演じる芳根京子さんはもちろん、ボディワークスを見てつけた永真を演じた寺島しのぶさんも素晴らしかった。
原作ケン・リュウの「もののあはれ」もぜひ読んで見ようと思う。
試写会だからこそ、石川慶監督の貴重なコメントも聞くことができて非常に楽しかった。