ShinMakita

Arc アークのShinMakitaのレビュー・感想・評価

Arc アーク(2021年製作の映画)
1.4
流浪のダンスパフォーマー、リナは19歳。ある日、化粧品企業エターニティの責任者エマと知り合いプラスティネーションの技術を学ぶことになった。プラスティネーションとは、依頼のあった遺体の皮下組織をプラスティックに置き換えてポージングさせること。生前の美を永遠に保存できる技術でありアートでもあるのだ。
11年後、プラスティネーションの第一人者となったリナは、エマの弟・天音と恋に落ち結婚する。天音は科学者で、プラスティネーションの瀉血・プラスティック注入技術を応用して細胞死防止薬を生体に投与する不老不死技術の開発に成功、リナを第一号として人類の不老不死化を進め始める。と同時に、この技術の恩恵を受けられない老人や社会的弱者のために、ある島に居住施設「天音の里」を開設するのだった。

そして月日は流れ、リナが90歳を迎えた年…30歳のままの姿で「天音の里」を運営するリナは、施設長兼医師として居住者たちに慕われる存在となっていた。無限となった人生でも、やりがいを見つけられる。そう信じて活躍するリナだったが、新たに里にやってきた月島夫妻と触れ合ううちに、その気持ちが揺らいでしまう…

「Arc アーク」

以下、言葉でなくネタバレで示して。


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「不老不死」と書くとファンタジーのイメージで荒唐無稽な感じがするけど、「ストップエイジング」と書いたら、いかにもな医学的かつSFっぽい響きになりますな。
俺の中では、SF映画というのは「エンタメ系」と「哲学系」に二分できるものなんです。本作は哲学系。そして、リアリティとか科学的考証もなく、映画的ルックスにもSF要素はほとんどありません。プラスティネーション(早い話が剥製作り)は手作業でアナログだし、その時代(つまり現代)から60年後の世界は、モノクロの効果も相まって、驚くほど昭和的。レトロフューチャーではなく、意図的に時代が逆行している感じがありました。生とは何か、老いとは何か、というような問題提起と観念的なストーリーは退屈なんだけど、ビジュアル的には面白くて、前半のエターニティ社シークエンスは生活感のない微妙なSF描写でタルコフスキー映画みたい。後半の天音の里は、海・モノクロ・坂のある村というお膳立てで大林宣彦のイメージです。ハルちゃんにも癒されるし^_^

観ていてワクワクドキドキも感情の揺さぶりも無い、全く楽しくない映画なんだけど、何故か心に引っかかってしまう作品。世紀の駄作・失敗作として映画ファンの記憶からあっという間に消えてしまう確率70%、10年20年後にカルト化する可能性30%。そんな映画でした。
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