彩糖サイダー

ひらいての彩糖サイダーのネタバレレビュー・内容・結末

ひらいて(2021年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

原作のファンで鑑賞。原作で好きだった孤独とままならなさと無邪気な怒りが足りなかった。大人じゃないんだよ、彼女たちは。行儀良くもできないくらいの衝動をフィルムに載せて欲しかった。

愛を演じている子がアイドル過ぎて、もっと何も持っていない子を選んで欲しかったと思う。あんな綺麗で可愛くちゃ感情移入できないじゃん。都会っ子感がすごくて田舎の閉塞感も伝わらない。

たとえと美雪の、手紙で文通してしまうような特別で美しい関係性・純潔な心を、持てない葛藤が愛にはあると思う。それをセックスみたいな誰でもできることで侵食しようとする浅はかなもがき、必死さが人間らしくて、傷つけることでしか二人の世界に入っていけない脆さを感じられなくて悲しい。

観賞後、監督のインタビューを読んだけれど、愛に感情移入をしたのだったら、この映画は監督が好きだった部分を根こそぎ落としてしまった抜け殻のように思えてしまった。毒にも薬にもならない形にするんじゃなくて、貫いて欲しかった。

たとえや美雪のように清潔で純真になれない苦しみを共有して欲しかったのに。自分の気持ちを置いてけぼりにされて、その間に他人の人生は進んでしまっていることに泣いたかつての私を、新しい表現でもう一度救って欲しかったよ。

本で読んだ最後、感情を吐き出しきったような、吹き抜けていく風のような爽やかさを全く感じられなかった。あの終わらせ方は原作のスケールを矮小化してしまった。卒業して学校の外に出ていくという旅立ちのメタファーが原作には入ってたでしょう。思春期にちゃんとトドメを刺してくれよ〜。

監督はまだ若いし、色んなしがらみもあってこの形になったと思うんだけど、将来的にはもっと愛に感情移入したような人たちに向けて作品を作って欲しいなと思った。