キャスティングは製作委員会によって左右されるのだろうが、題材的にもその振り分けが上手く機能していたと思う。細かい人物描写のニュアンスも製作費が倍以上かかっているであろう作品よりも気が利いているように感じ、好印象。
監督がインタビューでも語る通り、人を好きになるプロセスに善悪が付けられることに疑問が投げかけられる。心と体、どちらが先なのかだけが判断材料になることの暴論加減には頷かされる。
また、主人公のなりふり構わず本能に従うのみという常軌を逸した相手の心に、死さえ恐れず侵入しようとする描写を、校舎の壁伝いに侵入するシーンをメタファーとして取り入れる巧みさも光る。
あるべき姿から遡行した人間の姿が、なぜか美しくも見えてしまう不思議さに驚かされた。