ツクヨミ

旧グッゲンハイム邸裏長屋のツクヨミのレビュー・感想・評価

旧グッゲンハイム邸裏長屋(2020年製作の映画)
4.7
あわよくば入居したいー脱力系ゆるゆる日常ムービー。
旧グッゲンハイム邸という洋館裏にある長屋。そこには同居人たちが紡ぐ生活があった…
食事と会話が紡ぐ同居長屋の日々を綴った日常劇。予告編にてゆる〜い日常を感じさせ息抜き程度に本作を見てみたが、意外や意外あまりの心地よさに圧倒的な幸福感を感じる素敵な映画体験になった。
まず今作は実在の旧グッゲンハイム邸裏長屋という場所を舞台にし、これまた実際に住んでいる住人たちが出演し日常生活を見ていく話になっている。そのため最早ストーリーというものは存在しないし、その日その日の食事や晩酌を住人たちが一緒に楽しんでいくのが魅力だ。映画というよりかは"きんいろモザイク"や"ご注文はうさぎですか⁇"に代表されるような俗に言うきらら系やゆるふわ日常系と呼ばれる作品群に雰囲気がクリソツで笑える。だが個人的には高尾じんぐ先生の"くーねるまるた"というコミックをめちゃくちゃ想起する内容だったのは間違いない、見た時の余韻や幸福度がめちゃくちゃ一緒。
そんな内容でゆるゆるならドキュメンタリーなんじゃないかと思う人がいるだろう、しかし今作は小気味いい編集がうまく機能したコメディになっており実はドキュメンタリーすれすれの劇映画というスタイルなのだ。それは日常生活に垣間見えるフラッシュバックを活用した勘違いホラー要素だったり、恋バナに花を咲かす2人の会話に一筋のフラッシュバックが入り、実は2人とも違う人を考えていたという勘違いコメディになっている点に現れている。またちょっと変な展開になった時の最後に夢オチをつけるなど、実はテレビドラマみたいなコメディ編集が面白さや可笑しさを形成しているのが良い。
そして劇中出てくる料理やお酒などのなんとも美味しそうな描写、けっこう上から全体を映したショットだったり構図意識なショットだったりと実は撮影にも配慮していたのが凄い。夕食や晩酌.ティータイムを楽しむ住居人たちをちょっとした構図の世界で映した世界観は"春原さんのうた"に少し似ているかも。毎日を楽しく過ごし皆んな一緒に楽しみを共有すること、普通なんだけど実は生きる上で大事なことを今作は教えてくれる。細やかなものを楽しめと。
ゆるくて暖かくて微笑ましい最高の日常ムービーでしっかり幸せになれた映画体験だった。旧グッゲンハイム邸裏長屋、あわよくば入居して住居人さんたちと食事とお酒を酌み交わしたい!
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