ツクヨミ

偶然と想像のツクヨミのレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
4.6
偶然によって起こる物語はグッドエンディングかバッドエンディングか…
女友達と恋愛話、大学教授とその教え子、高校のころの友人、偶然によって物語は始まり進行していく…
濱口竜介監督作品。今作は三つの異なる物語を順に映していくオムニバス形式の作品であるが、タイトルにもなっている"偶然"がテーマとして異なる物語を結び付けていた。また共通しているのは内容が会話劇ということと人と人の再会が展開されていくことでもある。そして"ドライブ・マイ・カー"でも感じたことだがキャラクター達の話す言葉がいい意味で"セリフ的"というのが濱口竜介監督のスタイルなのかなとも感じた。
・第1話「魔法(よりもっと不確か)」では女同士の会話から始まる"恋愛"を基軸とした会話劇がかなり衝撃的な内容で胃がキリキリするようだった。しかし各キャラクターの本質を炙り出し衝突する展開に心打たれる素晴らしい40分の短編であったと言える。またラストのぐっと迫るズームインからの見せ方は実に映画的な面白さを内包しており魅力的。そしてキャラクターの立場によってはグッドエンディングにもバッドエンディングにも見られる終わり方も良い。正直衝撃さが先行しこの後の2話3話があまり頭に入ってこなかったぐらいお気に入りの短編になった。
・第2話「扉は開けたままで」では小説家兼大学教授と教え子の奇妙な会話劇が展開される…ちょっと笑っていいものか思う内容だったが所々笑いそうになった。またこの話のラストはしっかりとしたバッドエンディングだなと個人的に感じる展開が衝撃的で前半とのギャップが凄い。
・第3話「もう一度」では20年ぶりに再会した女友達2人が繰り広げる会話劇が展開される。そして中盤に挟まる小さなどんでん返しはなかなか面白くこの話を三つめに置いた監督の選択にグッジョブ。またこの話は第2話との対比になっているかのようなグッドエンディングで最後はちょっといい気持ちでスタッフロールを眺められた。
全体的にクオリティが高い3つの短編にかなり満足でき素敵な映画体験だった。このスタイルを貫いてくれるなら濱口竜介監督に是非ついていきたい。
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