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偶然と想像のみのレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
4.7
誰かの日常は誰かの物語になる。
人と人との繋がりは偶然から始まり想像の中で広がっていく。

日常の瞬間を切り取る長回しのシーンと、感情がほとんど乗っていない無表情な声による会話劇。
淡々とした会話によるアクションのみで物語が進んでいくことにより天才的な脚本が際立つ。
詩的な台詞や固定された空間、まるで舞台を観ているかのような感覚にさせられた。

本作の最も映画的な瞬間はやはりズーム演出による想像のシーンだろう。
契機になり得た可能性が描かれることによって真実が説得力のある形で提示される。
想像と真実を隔てる壁が溶けるも再び固まる様子からは、運命の残酷さが見えてくる。

私たちは想像することで人生を豊かにしようとする。
偶然出会う人々やモノ、私たちは互いに影響し合い人生を創り上げる。
普段何気なく過ごしている時間、有り余っているようで刻一刻と減っていく時間の中で私たちは何を見出すのか。
美しく素晴らしい瞬間とは私たちのすぐ側にある日常にあるということを思い出させてくれる。
み