メザシのユージ

対峙のメザシのユージのレビュー・感想・評価

対峙(2021年製作の映画)
4.0

2023/02/018 6本目 「対峙」

アメリカのとある高校で生徒による銃乱射事件が発生し、多数の同級生が亡くなり、実行犯の少年も校内で自ら命を絶つ。
6年後、事件で息子を殺されたペリー夫妻(ジェイソン・アイザックス、マーサ・プリンプトン)はセラピストの勧めで、事件を起こした加害者の両親と対面することになる。
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赤ちゃんが道を一人ではいはいしながら進んでいたとする。進む先には深い穴があいていてそのままでは落ちてしまう。その時、あなたは「赤ちゃんを助けて親から金をもらおう」とか「ここで助けたら有名になれる」とか考える前に行動して赤ちゃんを助ける。それは人の根源には善の心があるから、理由も理屈もなく穴に落ちる前に赤ちゃんを助ける。人の基本的性質は善なのだと思う。

アメリカの高校で起きた銃の乱射事件。被害者の少年も、加害者の少年も亡くなっていてそれぞれの両親4人が教会で話し合う。「対峙」はただそれだけの映画だが、そこで繰り広げられる会話は互いの悲しみ、怒り、戸惑いが込められていて観ている間、自分もその場にいる気持ちになった。被害者側の父親は犯人の少年はサイコパスで自分達とは異なる人間なのだと言いたい、加害者側は息子は恐ろしい事をしでかしたが、それでも虐めや親の無理解など原因はあったし愛すべき存在だったと言いたい。

加害者の家族も、被害者の家族も愛する息子を失ったのは同じ。でも、立場がまるで逆。それでも話し合う事をやめない、話し合うために集まったのだから。話し合いに使うテーブルが円卓なのは、四角いテーブルと違って、こちら側とあちら側の区切りをつけなくなかったのだろう。

このような加害者と被害者の家族が対話することを修復的司法と言い海外では実際行われている。修復的司法では最初に「対話は結果ではなく準備なのだ」と学ぶそう。これはなんの準備か?それはお互いを理解し、信頼しあうための準備なのだと思う。

この映画は、胸が締め付けられるような会話劇を通して「愛」と「赦し」の大切さを伝えようとする物語だった。

「人を赦さないならば、あなた方の父も、あなた方の過ちを赦さないであろう」マタイによる福音書6章 14節15節