あ

対峙のあのレビュー・感想・評価

対峙(2021年製作の映画)
3.8
線の引き方、消し方が異様に上手い映画でした。冒頭はやたら物を真ん中に置いて画面を真っ二つに割っていたり、シンメトリーの構図や二人ずつの切り返しが多かったりして、両者の圧倒的な隔たりを感じさせつつ、後半に行くにつれて各々の感情が露わになってくると、一人ずつをカメラに納めたり、シネスコにして広角で全員をカメラに納めたりして、両者の感情的な一体化を見せる演出。これによって、ロケーションが移動しないにも関わらず、空間的にも物語的にも全く狭さを感じませんでした。
ただその点で一つ納得がいかなかったのは、両者が教会を挟んで反対からやって来る描写がなかったことです。前半はやたら教会を左右斜めから撮っていたのにも関わらず、ラストでは真正面から教会を撮っていたところを見るに、教会(キリスト教的な意味の赦し)が両者を抱き寄せたという構図になっていたのでしょうが、だったら教会を挟んで反対から両者を登場させた方が、分断と和解の対比がより鮮明になった気がします。
また、こういう大規模な事件を個々人の和解の問題に落とし込むのも若干違和感があります。途中政治的な話に入りそうになった時、静止がかかりましたが、こういう話題こそ政治的に社会的に解決していかないと根本は何も変わらないと思います。もちろん個々人の和解も重要ですが、それに頼るだけでなく、当事者以外も含めてもっとみんなで考えていく問題な気がしました。被害者も加害者もある種学校社会の被害者だったわけですから、どちらの両親とも「遺族」として共に歩んでいけるのが理想なのかと思います。難しいでしょうが...。
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