名波ジャパン10

対峙の名波ジャパン10のレビュー・感想・評価

対峙(2021年製作の映画)
4.2
映画そのものが衝撃的な作品。導入部とエンディングを除き、全編が教会内の一室での4人の会話のみで構成されています(出演者は総勢7名)。フラン・クランツ監督のデビュー作ということであり、コストを抑えたという現実的な背景もあるかもしれませんが、新人監督だからこそ出来る実験的冒険といえます。
同級生による高校の銃乱射事件で子供を失い、精神的後遺症に苦しむ両親が、セラピストの勧めで犯人(事件後自殺)の両親との対話に臨むという設定です。犯人の両親を責めても仕方がない事を理解しながらも事件を止める手立てはなかったのかと遠回しに問い詰める犠牲者の両親。自分達は精一杯のことをやったつもりだと答えながらも息子に何が起こったのか、自分達に出来ることがなかったのか答えを見出せずに苦悩する犯人の両親。観客は2組の家族の苦悩の渦巻きに飲み込まれて、救いを求めてスクリーンに手を伸ばします。そこに救いは用意されているのか。映画ファン必見の作品です。尚、原題はMass。教会のミサのことですが、練りに練られた邦題「対峙」よりも映画の主旨をより的確に表現しています。