TakayukiMonji

対峙のTakayukiMonjiのレビュー・感想・評価

対峙(2021年製作の映画)
4.1
周りで高評価が目立った作品だったため、急ぎ劇場で鑑賞。
銃乱射事件の加害者と被害者の両親が対話する119分。まさに”対峙”するわけだが、原題のmassは、宗教的な集いのミサと、mass shooting(銃乱射事件)の2つの意味を重ねているようだ。
この4人の組み合わせで起こる会話劇自体が凄まじい質量で、被害者と加害者の親という直接的でありながら間接的な立場での対比関係から起こるさまざまな感情が絡み合って、心が抉られていく。
なかなか本題に切り込んでいきづらい空気感、やり場のない怒りを少しの落ち度をみつけることでぶつけていくしかないという感情が見えたり、それぞれの立場での苦悩が当然あり、それをお互いに理解しあっていくことが本当にできるのか。
許しではなく、“赦し”。否定的な感情を自ら解放して、肯定的なものとして乗り越えていく。(この一連の社会的システムとして、「修復的司法」というらしい。)


以下、ネタバレ



ラストの着地も素晴らしい。
どちらかが悪いという話ではないことは初めからわかっていたものの、被害者母親が赦しのやり取りを経て、どうしても自身の話を聞いてもらいたかった、、という本音を最後に漏らす。
観ている自分が、親の立場でもどちらの立場での苦悩にも共感できてしまい、客観的に観ているつもりが、主観的な立場で放り投げられた。何かしらの喪失は誰もが直面するし、そこからどう生きるか。複雑な立場でどう自らの心と向き合うのか。
そんな投げかけを全てぶつけられたような作品。
TakayukiMonji

TakayukiMonji