HirotoMori

対峙のHirotoMoriのネタバレレビュー・内容・結末

対峙(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

まとまりの無い台詞があまりにリアルで圧倒され、心が動かされた。そして、最後に加害者の母親がした告白には、私の親子関係を投影できる部分もあって、胸にくるものがあった。
未だに銃社会から抜け出せない米国に、このような物語はあといくつあるのだろうか。今回描写された被害者家族は何かを乗り越えられたかもしれないが、加害者家族は残り9家族とも向き合っていかなければいけないという事実に途中で気付き、行き場のない気持ちになった。

何度か途中で挟まれた赤い紐の描写だが、Fran Kranz監督のインタビューいわく、偶然結んであった測量テープで、「まるで今の社会を測り直さなければいけない」ことを暗示しているようだと感じたらしい。
確かに、米国の銃社会を測り直す上でこの映画はとても有意義だと思う。特に、被害者一辺倒にならず、イデオロギーも表に出しすぎずに、加害者側のストーリーを描写していたことは高く評価できる。
これは他の批評からの受け売りだが、「被害者と加害者の両親が対峙する構図から、それぞれが息子と親への対時と移り変わる」展開にしたからできたことだと思う。

なお、珍しく私は邦題(対峙)の方が、原題(Mass)よりしっくりきている。映画では全くMass shootingも描写されず、そのような事件の性格も中盤で明らかになる。そのため、むしろ上述した被害者/加害者の対峙や、親子の対峙がテーマのように思えたのが理由である。

少しだけ残念だったのは、ステンドグラスの描写が余計な気がしたのと、加害者の父親が先に帰ることが理解できなかったことだ。
ただ、総じて良い映画で、また観たいし、是非色んな人に観てほしいと思う。

(ちなみに被害者の父親役は、Jason Isaacs、ハリーポッターのマルフォイパパらしい。)
HirotoMori

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