父の人生が終末期に入った 急に怖くなって北から東京に戻った とはいえ面会は2日に一度しか許されず それ以外の時間の使い道が必要だった 面会は毎回14時から 30分程度で終わって 足早に駅まで歩きながら今日は映画を観ようと思った 久しぶりに人混みをかき分けて映画館へ行った 40分程時間があったので喫茶店で珈琲とサンドイッチを頼んだ ここ数日ボリュームのある食事を取る元気が無かった その日父は差し入れた麦茶を二口だけ飲んだ 明るい映画を見たいと思えなかったし感情移入をしてグチャグチャに泣いてしまいたいと思っていた 優しい映画だった 珍しく途中で眠ってしまっていて でもそれで良かったと思う 心も身体も消耗していた 今度はないの、という短い台詞が今も心の隅にじっと居座っている
