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秘密の森の、その向こうのYKのレビュー・感想・評価

秘密の森の、その向こう(2021年製作の映画)
5.0
家族と言えど、何でも知っているわけではない。むしろ、家族だから知らないことは多いかもしれない。ネリーは、母の実家の森で8歳のお母さんと出会う。(この映画では、8歳のネリーとマリオンを実際の双子の姉妹が演じている)。2人は毎日遊ぶようになるが、そこでネリーが知ったのは、ママがひとりぼっちだったということ。「秘密って、隠すことじゃなく話す人がいないこと」と8歳のマリオンは言う。しかしそれは、大人になったマリオンのセリフでもあるかもしれない。

親子の間に潜む断絶を認め、ひとりの人間として対等に向き合う。本作では母と娘が主題になっているが、「子どもの頃のパパの秘密を教えて」という問いに対する父の告白が、様々な親子関係にも存在するテーマだということを示唆しているのが良い。

登場人物は5人ぐらいで、舞台もよくわからない森の中。おかげで73分というミニマムな脚本が実現されているが、その中には数えきれないほどの演出の豊かさがある。例えば、過去か現在かを示すキッチンの壁紙。実家に到着したとき、「こんなところに昔の壁紙が!」と言った父親の一言が効いている。残った壁紙の一部が、常にネリーの背後でネリーを囲うように配置されているのも面白い。
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