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Chiny i lyudi(原題)のkyoyababaのレビュー・感想・評価

Chiny i lyudi(原題)(1929年製作の映画)
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チェーホフの原作を元にヤーコフ・プロタザノフがまとめたオムニバス形式の無声映画。原題《Чины и Люди(階級と人びと)》は、英題で "An Hour with Chekhov" と改題されたが、まさしく1時間という短い時間でチェーホフの階級(と、それに迎合する大衆の)批判をうまくまとめている。

短編はそれぞれ《Анна на шее(首上?のアンナ)》、《Смерть чиновника(或る書記官の死)》、《Хамелеон(カメレオン)》と題されており、いずれも階級崇拝を喜劇的に、そして、階級に躍らされ人生をダメにしてしまう登場人物たちを悲劇的に描いている。

なかでも、『或る書記官の死』は当時としては斬新な編集技法を用いていたりなど興味深く、そのテーマが「まったく気にしなくてよいことなのに、相手が官僚であるという理由だけでビビって勝手に怖がって自滅してしまう主人公」であることなど、現代の我々であっても教訓的な側面を見いだせる──私はいつも思うのだが、あの「小池百合子が椅子に着くときに椅子を引いてあげる人」は必要なのだろうか? そう、彼自身はそう思っているのだろうし、周囲もそう信じ込んでているのだ。それがチェーホフの『或る書記官の死』で描いた、『階級と人びと』なのだ──。

版権の切れた映画はオンラインのそこらじゅうに散乱されているが、なかでも Исторический Клуб という団体がアップロードしている動画は画質も良く、音楽もクールなアヴァンギャルド=ジャズ・ピアノが添えられており、『階級』に右往左往する愚昧な大衆の心中がちょうど表れているのでオススメだ。

余談だが、この映画のポスターは、ザ・ロシア=アヴァンギャルドといった具合の(アーティストはどこまでブッ飛んでいたのだろうと心配になるくらいの)非常にカオスなアート・デザインであり一見の価値がある。
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