きさら

ボーはおそれているのきさらのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

・主人公のボーが生まれてくるところ、母の胎内から映画開幕でこの気持ち悪さにおお!!とテンションがまず上がる

・母親の愛、母親の呪縛、母親の支配、母親との依存関係が描かれており、羊水の中から始まり羊水に沈んでいく…
ラストは本当に独りになったボーの心象風景だと解釈すると、一人で海という世界に出たもののやはり母親から逃れられなかった?

・私自身昨年祖父が亡くなり、急遽準備をし10時間のバス旅をして葬儀に向かったため一気に話がひっくり返る直前まで個人的にもかなり感傷に浸り泣いてしまった
あと仕事が忙しすぎて日々の記憶が抜けてたりそんな中でiPhoneとiPadを紛失したのがここ直近の話なので序盤の怖さはかなりわかる

・ストーリーの中で話が何度も転換するので次に何が起きるかわからない緊張あり、ヘレディタリーのように最悪のピタゴラスイッチが決まる愉快さもあり、長いが故の中弛みはたしかにあるけれどかなり楽しめた

・ヘレディタリーやミッドサマーに比べると色んな要素が湧いては出てとっちらかり感はあるけど人の記憶ってとっ散らかって出てきて欲しいときに出てこなかったりするしそういう脳内を覗き見ているかのようなとっちらかり方を体験できる作品と捉えているのでかなり好き
途中の寸劇も、あの手の突拍子もないけど現実的なラインの妄想ってやりがちだからそういう意味でも脳内だと思う
現実と脳内の出来事が曖昧ごちゃ混ぜな脚本、映像作り、すごい

・映像のゴチャゴチャ感はヤン・シュヴァンクマイエルを彷彿とさせるけれどこっちはそこから耽美さを引いて出来ている
同じ風邪の時に見てる夢と方向性は近いと思う

・どこからが仕込みでどこからが偶然の出来事なのか、どこからが現実でどこからが夢なのか?
個人的に一番の謎が外科医の家の娘のペンキ一気飲みなのであれは母親の仕込みなのか…?
ボーの母親とは別の母親を出したところにも意味があると思うので仕込みではないと解釈したい

→2024/3/31追記
あの外科医の家もカメラで全て記録されていたことを思うとあれも全部ボーの母親の仕込みだったな…
恐らく金で雇われた両親がボーに構って、元々兄が贔屓されていたと思っている娘にとっては最後の抵抗として兄の部屋で大暴れしてのペンキ一気飲みじさつだったのだろう、それが母親にとっては想定外だったから金を超えてボーをまっさつする方向…の展開

・ボーが屋根裏部屋の秘密を見て母親に縋った後の母親からの責め、聞くほどに大人気ないけれど産んでくれと言った覚えはない!!!!と反論したくなってしまう…

・ボーが無垢で自主性に欠けている無害な成人男性なのは母親からの等価交換の愛ゆえで、愛自体はあったので義務が生じておりそれ故に縛られてる、母の胎内を望んでいるのが家族のエゴ、義務、呪縛…
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