むーん

ボーはおそれているのむーんのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

最初の街を出るまでは満点。神経症に苛まれたボーの目に映る不条理かつシュールな世界の描写が素晴らしく、次に何が起こるのか、不穏な期待感を絶えず煽ってくる。ただ、ドクターに拾われて以降は徐々に悪夢のようなイメージの猥雑さが喪われていく。森でキャラバンが演劇を公演するあたりは映像的にもさほど面白みがなく、劇の内容と現実が交錯するあたりは、物語の想像力としてはかなり平凡な部類で単調に思えた。そして最後に辿り着いた母との対決は、同監督が『ヘレディタリー』で撮ったような家族関係の歪みを描いているが、ここがあまりにも説明的で、『世界の不条理さ』という恐怖から『親子間の愛情関係の機能不全』という卑近な怖さへとシフトチェンジしてしまっていて、映像的なイマジネーションの煌めきも手放してしまっており、非常に残念だった(陰茎を象ったクリーチャーも、コレジャナイ感がある)。
ただ、自分の作家性を大衆嗜好に阿ることなく表現し切っている点と、部分的な映像表現の満足感は高いため、総合的には、決して悪い作品ではないと思った。
むーん

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