UoxoU

ボーはおそれているのUoxoUのレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
5.0
良い映画体験だった。ボウが恐れているのは母、母に叱られること、母を愛せないこと、母を愛さなければならないことだと考えた。『もし、こんな悪いことが起きたらどうしよう』と先へ先へと思考をはりめぐらせると、それとは違う悪いことが身に降りかかる。不安な気持ちが強すぎるが故の焦りによって最悪の事態に巻き込まれている。彼が森の奥で見つけた村で観た劇は、彼にとっての夢、言葉通り波乱万丈な人生でも探し続ければあたたかく幸せな家族がいるしあわせ、しかしこれもボウが幼い頃に母からかけられた言葉によって目が覚めていた。現実逃避をすることすらかなわない、彼の全ては母の呪いであると思った。
ボウの主体性のなさ、過度な不安思考は発達障害からくるものだと考えた。そのため、ラストの"こんなにも愛情を注いだ息子からこんな仕打ちを受けました"裁判は見ていてかなり苦しかった。ボウの母は、母から愛情を注いでもらえなかった私が自分の息子には心の奥底から絞り出した愛情を注いであげましたよ、と大声で言うが、それだけ。ボウに見返りを求めてはいるが彼の行動心理や意見や相談を聞こうとはしない、聞いても自分で考えなさいと投げたり、それを真っ向から否定して被害者の立場に立つ。自分は母とは違う、母にしてもらえなかったことを、で愛情を注いでいるだけでボウの本質を理解しようとはしていない。愛情は注げばいいというものではないし、ボウの母もまた母を恐れていたのだろうと思った。ボウが途中でお世話になった家庭も含めて、この作品は徹底して"母と子"の映画であった。
UoxoU

UoxoU