ヒロ

ボーはおそれているのヒロのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

24-9-23
アリ・アスターはやはり狂っている

色々な前評判が聞こえてきましたが、アリ・アスターの最新作ともなればそれは観ないわけにはいかないでしょう!

極めて難解ということで、キネマ旬報と映画秘宝で予習をして臨みましたが、いやーさっぱりわかりません!笑
分かりませんが、鑑賞後もこの映画のことが頭からこびりついて離れないんですよね。

難解なのはメッセージ性であって、映画内の個々の事象は、突拍子はなくともそれ自体は理解可能な出来事だし、論理的な繋がりもあるので、物語自体は複雑ではありません。
3時間の上映時間もそこまでの長さは感じませんでしたので、上映中たいくつを感じることはありませんでした。

一番わかりやすく楽しめるのは冒頭のボーの住む街のパートです。なんなんだよこの街ってかんじですよね笑
これからどんな世界に引き込まれるんだとワクワクしてしまいます。

次なる郊外セクションは、振り返ると一番よくわからないセクションだったかもしれません。
登場人物それぞれに思惑があるようで、結局あいつらの正体や目的はなんだったのでしょうか?
ボーの少年時代の客船回想シーンもなかなかの重要シーンですが、水死体の浮いているプールの中からのショットなど、印象に残る作りになってますよね。

本作はあまりに突拍子もない展開が続くのでボーに共感するというより少し引いた感じで観ていたのですが、森の劇団パートは私もボーと一緒に劇の中に引き摺り込まれてしまい、「こんなのあんまりだよ!」と感情移入してしまいました笑
全体的に聖書のヨブ記を参考にしているとのことですが、この辺りは特にその毛色が強いですね。

劇団パートの後あっさりとヒッチハイクで家まで辿り着いたのは逆に驚きでしたが、家に着いた後の展開は「家族の呪い」を描いてきたアリ・アスターらしい展開です。
まずセックスシーンの結末は不謹慎ながらちょっと笑ってしまいますよね笑
しかしボーの運命の相手すら自分の会社の従業員として支配しているというのもあのお母さんこわいです…
その後はお母さんの復活から精神科医登場、そして屋根裏部屋のアレともう怒涛の展開です。
屋根裏部屋のアレはさすがに男性性のメタファーとしてのボーの幻覚?ということなのだと思うのですが、気持ち悪いですね笑

そしてボーがお母さんと決着をつけて再出発(あるいは逃避)というラストかなぁと思いきや、さすがはアリ・アスター、そんなわかりやすい終わりではなかったです笑
あの裁判という名の吊し上げはなかなか見応えがありましたし、あの医者の家だけではなくて全部が録画されてたのかなぁ、なんだかトゥルーマン・ショーみたいだなぁと思って、ボーの生活(というか人生?)はすべてお母さんの手のひらの上の出来事だったのだろうかと怖くなりました…

「お前にこの作品がわかるか!」と聞かれたら「すいませんわかりません」と言わざるを得ませんし、人に勧められるかと言われるとうーんという感じなのですが、アリ・アスターの前二作を面白い(めっちゃこわい)と思える人なら観ておくべき作品なのではないでしょうか。
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