「フィッシュマンズ」ほど心を抉られたアーティストが後にも先にも出てこないという絶対的な確信が、僕の人生の誇りです。
僕が生まれる前すでに佐藤さんは亡くなっておられましたが、彼の抽象世界はしっかりと僕らの世代の心象風景にもリンクしていて、彼が如何に優れた才能を持った詩人であったかを思い知らされますね。
本作で描かれた世田谷三部作はどれも言うまでもなく邦楽史に永遠に残る名盤です。
どの楽曲も、決して見たことがないのにどこか懐かしく、悲しいほどに優しく胸に染み込んできます。
僕が一番好きな曲は『ひこうき』です。
2人の物語は
いつでもあの日のまま
いくつもの時がたっても
消えない飛行機雲も
あの日のままだよ
こんどもここでずっと会える
軋んで壊れていくような攻撃的なギターソロと浮遊感のある優しい歌い方の天才的な親和性が嫌なほどに心地よい一曲です。
空に残った飛行機雲の揺れる直線の物悲しい風景が瞼の裏に浮かび上がってきて、聴いていると涙が出ますね…