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エッシャー通りの赤いポストのgoのレビュー・感想・評価

3.8
カメラっていうのは、愛してるモンに向けるんだよ!!

という台詞はアドリブだったらしい。この台詞が正しいとすれば、この映画の監督が向けた、カメラの向こう側への愛はいくらか自己中心的のように見えた。役者たちは駒のように、監督のやりたいことに使われている印象を受けた。あるいは良心的に解釈すれば、そういう独りよがりの若い愛=自主映画の初期衝動をあえて再現しようという試みだったのかもしれない。

ともあれ、役者たちの多くは、監督のやりたいことをやらされている感じがあった。しかし、思い返すと、藤丸千という俳優だけは違った。監督が与えようとする役を食い破るようにして、画面の中に毅然と存在していた。まさにそういう役どころでもあったのだが、劇中の役とオーバーラップしながら、台本を突き破るようにして自分の言葉と動きをシーンにぶつけていた。そういう意味では、この映画をつくる映画、そしてそれを映すそれぞれの画面やスクリーン、それらの枠組みをぶん殴るような衝撃があった。実際、我が家のテレビにはヒビが入ったかもしれない。
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