KUBO

茜色に焼かれるのKUBOのレビュー・感想・評価

茜色に焼かれる(2021年製作の映画)
4.0
今日は石井裕也監督最新作『茜色に焼かれる』最速試写会。

上級国民のじいさんがブレーキとアクセルを踏み間違えて交通事故を起こす。冒頭のモチーフは、ほぼほぼあの「東池袋自動車暴走死傷事故」だ。

加害者は逮捕もされず天寿を全うし、残された被害者親子はギリギリの貧しい暮らしを余儀なくされる。

コロナ禍の世界を描いていることと相まって、作品に底通するのは、貧富の格差のみならぬ、見下す者、歯を食いしばって生きる者との隔たりの大き過ぎる格差社会。

これでもか!という不幸の連続にも「まあ、がんばりましょ」と、自分を殺しながらも日々を生きる母・良子は、謝罪もない加害者からの「補償金」の受け取りを拒否する頑固な正義漢でもある。

良子は風俗で働きながら中学生の子供と慎ましい暮らしを続けていたが、度重なる理不尽な不幸に、ついに抑えに抑えていたフラストレーションを爆発させる!

この主人公、良子を演じる尾野真千子が良い! ここまで重い役にどっぷり主役として浸かる尾野真千子は初めて見た。息子を乗せて土手を自転車で走るラストの力強い「母」は、『湯を沸かすほどの熱い愛』を彷彿とさせる「母」像だ。彼女の代表作になることは間違いない。

また息子役の和田庵くん。新人かな? ピュアで素晴らしい新人が現れた。母はどんなに辛くても耐えて耐えて生きぬいてきたけど、こんな素晴らしい息子に育てたんだもん。あなたの人生は実を結んでいるよ。

コロナ禍でみんなが辛い世の中で、それでも負けずに生きて生きて生き抜く、力強〜い母と息子の物語。石井裕也監督の新たなマスターピースだ。
KUBO

KUBO