青いビニール袋

茜色に焼かれるの青いビニール袋のレビュー・感想・評価

茜色に焼かれる(2021年製作の映画)
4.5
51本目

シングルマザーの田中良子は7年前夫を亡くし、
現在は生花店のバイトと、夜の花屋(隠語)で息子の生活を支えている

夜空はいつでも最高密度の青色だ、生きちゃったなど、
近年は貧困や社会的弱者を描いてきた、
僕が邦画で一番好きな映画監督、石井裕也の最新作

この世の理不尽さをギッチリと詰め込んだ本作は、
どう見ても実在の事件をモチーフにしたシーンから始まる。
その後舞台は7年後へ飛び、コロナ禍の日本が描かれる。
そこでもバイト先の店長からはよくわからないルールや、
夜も客からひたすら罵倒される。
様々な出来事に対して、良子が紙一重で堪える姿は
見ているこちらも、私たちが住んでいるこの世の現実に対し、
苦虫を噛み潰したような表情を思わず浮かべてしまう。

劇中でも言われているけど、赤色が象徴的で、
着る勝負服が赤なのはもちろん、何か重い話をしているときに
赤い照明が点滅していたり、
そしてタイトル通りのルールからはみ出して、
自転車を2人乗りしながら茜色に焼かれているシーンは美しかった

主演の尾野真千子は、今作がベストアクト。
今年の映画賞総ナメするくらいの素晴らしい演技だった
また同僚で出てくるケイ役の片山友希も素晴らしい。
君が世界のはじまりでも感じた只者じゃない演技力が良い。

凄くキツい話ですが、見終わった後は
こんな理不尽な世界でも生きていこうと思える
力強い作品だった