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茜色に焼かれるのShinMakitaのレビュー・感想・評価

茜色に焼かれる(2021年製作の映画)
2.7
元官僚の高齢者に夫を轢き殺された田中良子。7年が経ち、良子は中学生の息子・純平と2人で公営住宅で暮らしている。生活は苦しく、昼はホームセンターの生花コーナーでパート、夜はピンサロで働く日々だ。夫の父を施設に入れたからその費用もかかるし、夫が愛人に産ませてしまった子の養育費も払っている。毎日毎日、舐められ、嘲りを浴びせられ、嫌がらせを受けても笑顔でやり過ごしてきた。純平がいじめに遭っても理不尽にホームセンターを解雇されても、なんとか乗り越えた。でも…


「茜色に焼かれる」

以下、「まぁ、ネタバレしましょ」

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最初に、尾野真千子のヌードを期待していた貴方、残念ながら露出は控え目ですので悪しからず。

なーんて下世話な話はしたくないね。この映画は、断言するけど、今年絶対に観ておくべき作品です。


まず、コロナ時代を逆手に取っているところに拍手。マスクとアクリル、ビニールシートの使い方…弁護士・嶋田久作が初めて映る葬儀場でマスクを着けたりズラしたりする仕草や喫茶店でのアクリルによる「2人が相容れない」表現など、コロナの日常を演出の武器として活用しているのが凄い。矛盾だらけの社会のルールを現代のコロナルールになぞらえたり風俗の場面が余計に惨めに映ったり、なども今の時代だからこそ。

そして、良子や同僚ケイに容赦なく襲いかかる不幸の連打。救いがなさすぎな中で浮かび上がるのは男の身勝手さ。シングルマザーや風俗嬢を下に見ながら欲望の捌け口として利用する汚さ。同じ男性として、申し訳ない気分になるよ。でも、これが「今」なんだよ。ナイナイ岡村の失言が表していたように、これが現実なんだよね。

尾野真千子は、多分自身の集大成的な役どころで、その演技には感動しましたよ。生きるために演じ続けなくてはならない女。夢や希望が打ち砕かれても必死に立ち上がるその姿には胸打たれます。そして、もちろん純平役の子もケイ役の女優さんも良いんだけど、やはり永瀬正敏だよ。ピンサロ店長役で、とにかくカッコ良すぎ!

社会のルールに従っているのに、容赦なく社会から弾かれていく人間たちの絶望。確かに風俗描写や悪役たちのキャラがステレオタイプなのは気になったけど、現代を切り取った唯一無二な作品として評価したいです。オススメ。
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