生姜異物強壮2

ヴォイジャーの生姜異物強壮2のレビュー・感想・評価

ヴォイジャー(2021年製作の映画)
2.1
4部作を予定してたのに未完で打切りになった『ダイバージェント』シリーズの第1作目を任されたニール・バーガー監督は、自分と同世代の1963年生まれ。

その世代のせいか、制作脚本をひとりで賄(まかな)った本作は、かの"金字塔"映画『2001年 宇宙の旅』の影響を色濃く受けてる。

な~んて言うと、多くの鑑賞者から失笑を買うかも。「おいおい、時代の影響なら『エイリアン』だろ。さんざ寄生騒ぎの末に、まさかの"あのラスト"だぞおw」と。

まあ、たしかに"あのラスト"は余りに陳腐すぎたね。だし、エアロック室の窓が目隠ししてある時点で、飛び抜けたIQを有する優等人種な設定のザックが相手の「作戦」を見破れないハズがない。フツーなら銃撃せず、兵糧攻めに持ち込んでるわw

ま、それはともかく「どこが2001年的なのか」は次の通り。

(1)3部仕立てに「章分け」してる。
 と言っても『2001』のように具体的な章タイトルで区切ってはいない。本作では「主人公(ストーリーの目線の主)を2回、唐突に転じる」ことで3部に分けてる。

 ① リチャード編(全体の2割ほど)
 ② クリストファー編(同 7割)
 ③ セーラ編(同 1割)

逆に、このこと↑が全体を不統一で散漫な印象に、緊迫感を何気に断絶させてしまってるかも。第ニに、

(2)何度となく繰り返される「船内の廊下が加速するシークエンス」が、『2001』のスターゲイト描写を髣髴(ほうふつ)とさせる。

(3)淡白なモノトーン基調の船内デザインが、『2001』の宇宙船/宇宙ステーション/月面基地の内装デザインと似る。

そして最後に、

(4)就寝時間帯の「無人の船内」を(ほぼ無音な)定点静止カットでつなぐシークエンスが、『2001』のHAL目線を想起させる。

…そんなところだ。


わたし個人的には他に、にらみ合い状態だった人物関係が「想ってもいない銃器の発見」でいっきに流動化する下り……あの仕掛けが、1953年の邦画(監督はアメリカ人)『アナタハン』そのものにしか思えず。なんちゅー古くっさい設定を21世紀に持ち出すのか!?と、大いに萎えちまった。

また、ハードSFには不可欠な合理性に欠けるな、と思ったのは上述「もろエイリアンなクライマックス」の他にも…↓3点ほど。

(1)移民船の地球発進と惑星到達時に、エアロック越しに地球(惑星)がアップ映しになるが、船体が回転してないのに(手前の船内は)重力があるように描かれてる。

(2)医療チーフのセーラは「言わば女医」なんだが、執刀テクは高機能な人体シュミレーターで習熟できるにしても、疾病診断(総合的な生体データの診かた)はインターン研修とかで臨床医キャリアを積まないと=多くの患者を診ないと身につかないんじゃ?

(3)セーラは、ブルー服用を欠かすと性的暴走に走るのを目の当たりにし、嫌悪してた。ならセーラは、ブルーを服用し続けてなきゃ不自然。なのに彼女、結局は皆と同様に感情や性欲を発現させてクリストファーと添い寝。結局は飲まんかったんか~~い!??


ちなみに鑑賞した諸氏のなかには、序盤の船内教育シーンでAI音声が「三代を継ぎ、各世代24年を担当」と説明してるのに引っかかったかも。全航程は86年を要する。24×3=72年だから14年足りない。

もちろん、そのギャップの答えは「リチャードが最初の14年、面倒をみる」って話。乗船時6歳だった少年少女が、彼から指揮権を受け継ぐ予定は当初「二十歳になってから」の目論見だったぽい。

ただ、だったら(たとえば)出発わずか4年目に船外活動を要すような重篤事態になってたら? 船外に出る彼を10歳のガキどもが監視支援したのか? 逆にさ、子供たちの医療サポートや健康維持は十数年、リチャードひとりが「万能医者」でも兼務してたのか?

やれやれ……たしかにね。ツッコミ出したらキリがないやww