映画ペンギン

ヴォイジャーの映画ペンギンのネタバレレビュー・内容・結末

ヴォイジャー(2021年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

地球人類の希望として次の移住惑星を探査する船に乗せられた30人の子供の物語


地球はもうダメです。
いきなりこんなこと言ってごめんね。
って感じの状態になりつつある地球。
舞台は近未来、2067年くらい。
地球に代わる移住惑星を観測上は発見した人類は、この片道86年の惑星の探査船を出すことに決める。
そこに乗せられるのは30人の子供達。
この子らの孫の世代が、移住惑星に辿り着く計算である。

地球を飛び立つ第一世代に関しては、下手すると宇宙船内で人生を終えることになる。
そこで、生まれた時から隔離施設で育てて、広い世界を知らない子供30人を育成することに決まった。
そこへ、監督役に名乗り出たのは壮年男性のリチャード。
子供達の教育を担当していた男だ。
本来であれば、子供達がある程度成長させてから子供達だけ飛び立たせる計画だったが、「この子達を守りたい」という思いから、自分も宇宙船に乗ることを決意した。
それは、長生きすれば移住惑星にワンチャン辿り着けるかもしれない第一世代の子供達と違い、100%、宇宙船で生涯を終えることになる、その上での決意だった。

10歳くらいまで成長した子供達はすくすくと育ち、ついに宇宙へと飛び立った。
宇宙船内でも、リチャードの言うことをよく聞き、よく学び、規律よく、慎ましく、おとなしく宇宙船は目的地を目指していた。
十数年後、皆が20歳前後になったころ。多分30人の中でも頭がいい目の2人がいた。クリストファーとザック。
2人は親友同士で、とても頭が切れる。
2人はいつも食後に飲まされてる謎の青い液体について疑問を持ち、リチャードに内緒でアーカイブにアクセス、ついにその液体の正体を知る。
それは、人間の衝動、快楽、欲求を抑え、従順になる薬。
そのことを知った2人は、そうか、自分達は生物として押さえつけられてたんだ!
と憤りをあらわにする。
試しに青い液体をこっそり飲まずに生活してみたところ、心からエネルギーが漲る!
運動の時間も取っ組み合いでプロレスごっこ。廊下を全力疾走。腹から笑う。

そう、ここまで鑑賞すれば視聴者皆気づくと思うが、子供達は皆すごく規律よくおとなしい。文句を言わず役割をこなしている。半ばロボットのように。
宇宙船には見たところ遊び場らしい遊び場もない。それでもこれだけ不満なく規律よく生活できてるのはリチャードの努力の賜物でもあるのだろうが、この薬のせいだったのだ。
なんなら、肝心の子供を作る方法も、人工受精で24歳になったらやりますと機械から教わってるのみ。
ノーセックス。そんなもん年頃になったら猿の如く感情的になりそうなものですが、それも抑制されてるわけなのでした。
ザックは、同じ船に乗るセラの体が気になってしょうがない。触りたい。唇に触れたい。そんな衝動が爆発し、セラを抱き寄せ胸をまさぐるザック。
船は人体の接触は禁止である。何してんねんとリチャードが制止する。
どういうことや。ザックの親友のクリストファーに問い詰めるリチャード。薬のことを知った、リチャードは今まで僕らを騙してたんだと憤るクリストファー。
そんなクリストファーを優しく制するリチャード。「気持ちはわかる、なんなら今度地球向けのメッセージで訴えてみよう。後押しするよ」と超絶大人な対応を見せるリチャードに、クリストファーは拍子抜けするともに、やや尊敬の眼差しを向ける。
しかしこの後、悲劇が起こる。
その悲劇を皮切りに、規律に満ちていた船内は混沌を極め、子供達はそれはもう大変な事になっていくのであった。。。


あらすじとしてはこんなところでしょうか。

宇宙船という閉じられた社会の中で人間が一生を過ごす。
それもほぼ子供達だけで。
つーか、子供時代らしい子供時代を経験してない見た目は大人、頭脳は子供な連中のみで。
人類という種の本質、善とは。未来とは。
色々な要素の詰まった作品です。
あなたなら、この状況でどうしますか?
考えてみるのも面白いかもしれない。


※こっからはネタバレありのぶっちゃけ感想になります。




薬を飲まなくなった事で感情、欲求、衝動が溢れ出してますという描写がわかりやすくて良かったです。
セラにふられたザックでしたが、ザックのちんこが余程良かったのか、その後すぐにザックの誘いに乗ってファ◯クしてた女の子は割と終盤まで暴走ザックの小判鮫やってて笑いました。
元々の性分がザックの「やりたい事やろうぜ未来なんか知るか」って思想に賛同してたのか、ザックのちんこが余程良かったのか、それともこれも愛なのか、とても気になるところです。アバズレ感がすごかったけど推して測る描写があまりなく残念でした。
最後は従順に役割りこなす姿が見えたので、流されやすい子なのかもしれないですね。
リチャードの死をきっかけに、どんどん船内の秩序が終わっていく感じはとても良かったです。
あとおつむの弱い子供達の集まりなので仕方ないですが、ザックの煽動でまんまと率られてしまう子供達も本当残念な奴らだなぁと思うし、後半は暴力による恐怖政治だったので仕方ありませんでしたが、ザックの凶行に対するクソ程苦しい言い訳と扇動に乗せられるところも、モブキッズ達は本当に今後大丈夫なんでしょうかという気持ちになりそこも面白かったです。
意見の対立するクリストファーとザック、暴力と支配と欲望でどんどん手下を増やしていくザックの暴走、クリストファーとセラの奮闘、とても面白かったです。
好きな時に仕事して好きな時にセックスする生活サイコー!って感じでどんどん治安が悪くなるザック陣営は見てて本当おもろいです。
あとリチャードの死後、リチャードが映像記録に残していた、「子供達を守りたい」という発言を聞いたクリストファーとセラの、「守りたいって、何から、、、?」という疑問と、劇中まざまざと見せつけられるその答えもとても良かったですね。
あとドアのセキュリティがガバ過ぎる。
リチャードの死後もなんとかしてくれるAIとかいれば良かったのにと地球政府の頭の弱さは残念でなりません。
民主主義万歳映画です。

是非、ご覧ください。
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