シバザキ

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のシバザキのレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
4.7
 え、めちゃくちゃ面白いんですけど…。いまさらダークな鬼太郎に戻ったとて、今やお茶の間のスターだし休日の朝に子供向けアニメシリーズやってたコンテンツだし、子供ウケも欲しいだろうからそんなに攻めちゃいないだろう。とタカをくくっていたらかなり高クオリティの猟奇村ホラーサスペンス&妖怪。戦後モノとしても完成度が高く、水木しげるのエッセンスそのままに現代版アニメとして傑作です。

 予想していた通り作画は休日朝、または夕方の子供向けアニメの感じなのだけれどもその作画のままでスゲー不気味な因習村を描くのでより怖い。あの作画のまま人は無残に殺され暗闇の中から怪異が飛び出し目玉はくりぬかれる。こんなの子供が観たらトラウマなるぞ。ちゃんと血も出るし残虐な様子をしっかり映しているし、それをわざとらしい露悪的な感じもしない。この描写の容赦のなさで本作の本気度がうかがえる。

 ストーリーもかなりシリアス。戦後の日本社会から妖怪と因習村へのつなげ方も納得できるものだし、逆に今では珍しいくらいガッツリベタな因習村描写を120%出力してくれる。戦争で尊厳を奪われた水木が野心マックスのサラリーマンから、戦争と同様に弱者の尊厳を奪う因習村と社会に反旗を翻す人間になっていく過程とかすごくグッとくるし。水木とゲゲ郎のバディ感も最高。期せずして戦後モチーフの『ゴジラ -1.0』と同時期の公開となりましたが、本作の方が戦後を舞台にした意義を感じられた。

 アニメ映画としてキャラクターのもつ国民性とそれに相反するようなテーマで作られていて、そのミスマッチ具合が良い方向に働いていて結果として今まで見たことのない作品になっている文字通りの怪作。ゲゲゲの鬼太郎というキャラクターさえ知っていれば現行のアニメシリーズを追う必要もなく、グロ耐性と胸糞耐性さえあれば子供向けと侮らず観に行くべき。
 これ見た後に漫画版鬼太郎の誕生とか読むと泣いちゃうゼ
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