このレビューはネタバレを含みます
オンライン試写にて。
甘やかで瑞々しい濃密な時間の中、確実に心を削る緩やかに忍び寄る病の影。くるくると変わる表情がかわいらしい美咲が、「ずっと一緒に年を取っていけたらよかったね。さよなら晴人くん」と涙を溜めながらも浮かべる、際立って美しい笑顔がただただ悲しい。それぞれ異なる辛さを抱える人たちの中で、綾乃さんが躊躇いもなく「嫌いになっていいよ」と返して涙をこぼす姿が特別印象に残っている。綾乃さんのことを嫌いになりたくないから遠ざけようとする美咲の気持ちも理解できてしまうからこそ、大切に思うが故の噛み合わなさが切ない。写真をきっかけに幸せな記憶を思い返した直後、まるでドラマや映画のように目の前に現れる会いたくてたまらない人。その人に気がついてはもらえぬまま、雪道にひとり取り残される美咲。映像で見るこの場面の想像以上のインパクトに呆然とする。冒頭のモノローグに戻る物語は、写真をきっかけに、互いに知らない最初の出会いを幻のように残して終わる。美咲の残した手紙のしなやかな明るさが「桜のような僕の恋人」という言葉にかちりとはまる、とても鮮やかな結びの映画だった。