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ノーカントリーのものレビュー・感想・評価

ノーカントリー(2007年製作の映画)
4.5
このテーマを描くのにはエンタメが過ぎる(分かりやすすぎる)気はするが、それでも極力までエンタメ要素を削ったんであろう。
もう10回近く見てるし、原作小説も既読。

冒頭のモノローグ、金を掛けたストーリー、ドア越しの恐怖、殺し屋と、デビュー作『ブラッドシンプル』との類似点がかなりありつつ、それらを含めたすべての要素(脚本と演出テクニック)が何段にも上がった本作を見ると感慨深さを感じる。
BGMもほとんどないのエグい。

アントンシガーは確かに不条理を象徴化した記号的なキャラクターではあるが、ソファに座って牛乳を飲みながらゆっくりと考え事をするし、モーテルの襲撃の予行演習を同じ間取りの部屋で入念に行うし、撃たれた左膝の痛みに顔を歪めて必死に耐えながら治療をしたりと、実はユニークで人間的な面も多い。
シガーに交渉は通じないと言っていたウェルズが、いざ死を悟ると交渉しだすのもコーエン兄弟らしい。

オカッパヘア、圧縮空気家畜銃、ショットガンサイレンサーは今見直すとちょっとやり過ぎな感じがしないでもないが初見時の余りにもの新鮮さはいまだに覚えてる。
そして最後には、カーラに一種、死神の様な存在である事を否定され、自分の起こしてきた"不条理"が自分の身に降りかかる事になる。

救いが一つもない作品の中で唯一ラスト、シガーに無償で服を渡す少年たちがいるが、あれも中盤で傷だらけのモスを見ても何も助けず服を売りつけビールもタダで渡さない青年達のように成長していくという意味の様な気がしてしまう。

よく、コーエン兄弟らしく無い作品っていう評価を見るけど、デビュー作が『ブラッドシンプル』やから。

あえての欠点:登場人物意味深な事セリフで言い過ぎ。
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