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ノーカントリーのFilmholicManのネタバレレビュー・内容・結末

ノーカントリー(2007年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

死は隣り合わせ。そして金あるところに紛争は生じる。

この映画を観た私の率直な感想である。

ハビエルヴァルデム演じる殺人鬼シガーがとにかく強烈。

今まで観てきた悪役の中でも際立った存在感である。

007スカイフォールや最近だとパイレーツオブカリビアンの新作でも登場しているが、今作がこのスペイン人俳優の名を世界に知らしめた作品だというのがよく分かった。

その功績はファーゴでも印象的な殺人鬼を登場させたコーエン兄弟の手腕に他ならない。

酸素ボンベを持ち歩き、空気銃で眉間を貫通させる独特な殺し方はもとより、コイントスを用いたり、殺す前に奇異な会話を愉しむのも恐怖を煽るが、一番は間接的に殺したことを描くシーンが多かったことだろう。

冒頭の砂漠で死体がそのまま放置されてるシーン。

ガソリンスタンドにて癇に障った発言をした亭主に対し、何時に寝るかどこで寝るか等聞き出し、寝る頃にまた来ると告げ去るシーン。


モスの妻を殺しに行ったものの殺害シーンは直接描いてないが、家から出た際、自分の左右の靴裏を確認するシーンがある。

描かれてない以上解釈に他ならないが、モスを直接殺せなかったことを除けばシガーは有言実行するためおそらくそれぞれ殺しているであろう。

ただ、そんな彼であっても信号を守っていたのにもかかわらず、車に追突されて重傷を負ってしまう。

金に振り回され殺される人は多数いるが、死期を迎えて死ぬ者(ガンで亡くなるモスの義理の母)もいれば、理不尽に殺される者(シガーのエンストを直そうとした通りすがりのオジサン)もいる。

人生、どこに死が待っているかわからないが、

トミーリージョーンズ演じる保安官のように実直に真っ当に生きていれば妻に微笑まれながら見た夢を語る者も少なからずいる。

確かにかつては保安官すら持たなかった銃を一般人が持ち歩く時代になり、

老いた人々にとっては住みづらい国になったかもしれない(No Country for old men)が、

天国という国はそういった人々にとってはまだ存在するのではないかと感じた。


それとハビエルヴァルデムが事故後に助けてくれた二人組の少年にお金を渡すが、その金を巡って少年たちが口論しているシーンはお金を起因として紛争が起こる直喩であろう。

特異な殺人鬼と逃げる元軍人という逃避行を描いたクライムアクションかと思いきや、なかなか難解な映画であった。
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