たいよーさん

うみべの女の子のたいよーさんのレビュー・感想・評価

うみべの女の子(2021年製作の映画)
3.9
原作未読。舞台挨拶付きで鑑賞。言葉にしようのない苦しさを漂ってきて、原作に沿ったプロットで完結させているのであろう匂いは評価できる。しかし、傑作の手前に止まったのは、メッセージ性が弱く封鎖的だったから。キャラは愛しいのでパンフは買ってみた。


『猿楽町で会いましょう』でも果敢に挑んだ石川瑠華さんが今回も光る。こちらは自分から体だけを求めていく女の子で2面的。学校では集団にはいるけど何処か遠いところを見ているタイプ。至って平凡で幸せそうなくせ、拗らせた倫理観が顔を出す。一方の青木柚さん。今年の個人的主演男優賞は彼で決まりかも…そう思わせる圧巻の演技。その目に漂う人間味と臭さ、思春期に抱えるには大きすぎる十字架に振り回されながら感情のジェットコースターを行く。二人が現場で意識していた距離感が滲んでくるようで、恐ろしくも引き込まれる。

序盤から荒波は立ち、途方も無い海に投げ出される感覚は初めて。また、特に原作を引き継ぐために意識されたという濡れ場は、互いの距離を縮めることのないほど叙情的で、次の心の行方を左右するように感じた。しかも、中学生の身でありながら、大人を形式だけでこなそうとする複雑さが痛々しくも儚い。だからこそ、高校生パートにある勇ましさや少し大人になった小梅の姿が何故か微笑ましく思えた。

その他キャストも特に噛み合っていて良かった。今年更に華が開いた中田青渚さんは良いバランサーになりつつ中学生らしさを感じさせる。また、『君が世界のはじまり』の琴子を彷彿とさせる明るさも良かった。また前田旺志郎さんも新しい顔を見せてくれた印象。力強くリードしてくれていた。更に平井亜門さんも出てきて一層濃かった。相変わらず倉悠貴さんはやんちゃ役が多くて心配になるけど。笑


はっぴぃえんどと台風、そして濡れ場。印象的な音楽を巧みに入れた10代の言葉で形容し難い心のスレ。原作を読んでみたいと思った。
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