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コーダ あいのうたのItottyのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.5
コーダとは、聴覚障害の親に育てられた子どものこと。
※観賞後に知りました。

耳が聞こえない両親と兄を持つ、ルビー。一家の漁業を手助けしながら生活している高校生3年生が主人公。そんな彼女が船の上で、心地よく歌いながら漁をするシーンから始まります。すごく楽しそうでした。後で、彼女がいつも3時に起きて、働いてから学校に行くことはわかるのですが、、、客観的に見たら過酷でも、全くそんな素振りを見せません。
そんなルビーが、音楽の先生に才能を見出された時、自らが音楽が好きであること、そしてもっと音楽を学びたいことを認識します。初めて、自分自身の願いを持ったのです。でも自分が家族から離れれば、迷惑をかけてしまう。彼女の出す結論とは。。。



大感動!涙鼻水たっぷりでました。


まず、ルビーの歌が素晴らしかった。
まさに自信のない時や落ち込んだ時の歌声から、吹っ切れた時や思い通りにならない怒りをぶつける歌声まで、歌に気持ちが表れていました。
とりわけ、終盤に家族に向かって歌う彼女は、表情は本当に優しく、感謝と巣立つ決意を乗せた優しくて力強い声にとても感動しました。
そしてルビーに応えるように見守る家族の表情。歌声は聞こえなくても、そのルビーの気持ちを汲み取っている愛おしい眼差しでした。一方通行でなく互いに思いやるからこそ生まれた感動だとおもいました。
何回か泣いたかはわかりませんが、マスクがびっしょりしたことだけはしるしておきます。


そして、ルビーの家族が本当に素敵でした。
下ネタ満載の親父も、ワガママ自己中気味の母親も、出会い系三昧兄ちゃんも、どうしようもないところもあるけれど、互いの気持ちを思いやる心の何と深いことか。
夢を諦めようするルビーに対して抱いた感情はそれぞれでしたが、皆に家族を愛する故の気持ちのこもったメッセージがありました。手話って、声色や声量がないから、気持ちを表現する要素が少ない。だからきっと嘘もつきにくいだろうし、とにかく全身で全力で伝えなきゃならない。特に兄ちゃんの夢を諦めるなってメッセージは、もしかしたら下手に声で表現するよりもはるかに大きなエールだったんじゃないでしょうか。
幸不幸は環境が決めるのではなく、自分自身が決めることなのだと、ルビー一家を見て思いました。映画史上一番好きな家族かもしれないです。


最後に印象に残ったのは、無音という音を大切に使ったシーン。
何度かだけでした。でもこれがあったから、家族の気持ちを想像することができました。
ルビーのコンサートに家族が来た時、娘が喜んでくれるから聞こえなくても笑顔を見せに来たんだろうなくらいに思ってませんでした。でも、彼らと同じ感覚になった時、涙が溢れた。周りの観客は笑って泣いて感動しているのに何も聞こえないんです。
悔しかっただろうな。周りに褒められる娘の歌を聞きたかったろうな。って。
でも、それは違ってたんだと気づきました。
家族はみんな笑顔だった。むしろルビーの歌の素晴らしさを周囲に教えてもらって嬉しかったんだと。
あの数秒間の沈黙の中で巡った感情。コーダと家族、それぞれの気持ちに丁寧に寄り添い、思いを馳せる演出が本当に素晴らしかった。


帰りの車ではサントラをずっと聴きながら。思い出して泣きそうになるから運転ちょいと危なかったよ。


とにかく、本当に見てよかった!
そして全人類に見てほしい!
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