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コーダ あいのうたのをんのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.2
CODE【コーダ】
①耳の聞こえない(ろう者の)両親から生まれた聞こえる(聴者の)子ども。
②曲の結びを表す音楽記号。
反復記号(主題繰り返し等を指示する音楽記号)と共に用いられることが多く、盛り上がりの後コーダで美しくまとまることが多い。

手話×音楽(歌)×映画。
好きなコンテンツがぎゅぎゅっと詰め込まれている本作、タイトルやテーマからもずっと気になっている作品でした。
ただ、手話が感動させるための道具に利用されていないか、観るまで正直お節介心があるというか、心配している部分もありました。
(私も手話学習者としてよく耳にすることは「手話=福祉」「ろう者=穏やかで優しい」というイメージ。このイメージを誘発するような、良くない意味で『美しすぎる映画』だったら、または『啓蒙的な映画』だったらどうしようかと要らぬ心配をしていました。また『手話歌』も賛否両論あったりとなかなかセンシティブなところではあるので…気になった方は調べてみてください。)

しかし始まってみれば、冒頭から辞書に載っていないようなスラング手話が混ざってきていたりだとか、ちょっとお下品なところがあったりだとか。性愛もオープン。「あぁ、普通の映画だ」と安心して見始めることができました。家族の中の生きた言葉として使われる手話。言葉が違うだけで人の性格や考え方、生活様式は様々。人、という根っこの部分は変わらない。そんなところにほっとしました。

「あいのうた」と副題にもあるように、家族愛、兄弟愛、友愛、恋愛、師弟愛、様々な形の『愛』が奏でられている愛情深い作品でした。

厚かましくも「普通の映画だ」とほっとしながら観始めた本作、観終わった後は既に「大好きな作品の1つ」になっていました。
円盤もきっと購入することでしょう。
このようなご時世ではありますが、是非、出来る限り、多くの方に観て頂きたい作品です。

※パンフレットからの裏話:
監督が通訳を頼まず自ら手話を覚えて会話をしていたということ。ろう者の役はろう者のキャスティング以外は考えていなかったこと。なまり等も含めた手話表現やろう文化を含めた表現をすべく、アドバイザーをつけて制作を進めたらしいということ。このような監督の考え方・方向性が功を奏した作品だったと思います。
パンフレットも評論家の方からだけの言葉でなく、ろう者コーダ各界の著名人の方からの言葉も掲載されていて、かなり読みごたえのあるパンフレットになっていました。デザインや写真だけでもかなりキュート!パンフレットも是非!
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