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コーダ あいのうたのagatheのネタバレレビュー・内容・結末

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

映画館の予告でみてこれは映画館に行かなければと思った作品。
本当は会員デーの金曜日に行こうともくろんでいたんだけれどもいい時間の上映がなくて土曜日に思い立って行ってきました。

予告の映像がとても素敵で、その上歌う女子高生で家族唯一の健常者、っていうのにひかれて見に行ったわけです。
マーリー・マトリン久しぶりに見た。
聾唖者の物語になると彼女が登場するのは想像がついただろうに、久しぶりすぎて、えっと誰だけこの女優さん?と名前を思い出すまで数分かかったのには自分の脳の老化を感じます。

ルビーがいい子すぎて、どこかで爆発するんじゃないかとひやひやする場面もあるけれども、きちんと家族に愛されているという基盤が彼女を守るので、彼女が大爆発することなく物語が進んでいく。
映画ってどの映画もそうだけれども、その状況におかれた自分を想像しながら見るわけです。
歌うことが自分のアイデンティティになっているルビー。
でも自分の歌を大事な家族には聞いてもらえないという悲しさがどれだけのものかというのを想像しながら見るわけです。
ずっと主人公のルビーの視線で物語を追っていたのですが、ルビーの発表会の歌の場面で突如映画の音声がなくなったの。
完全なる無音。
これがルビーの両親と兄の世界なのか。この見えている世界がすべてであれば、耳の聞こえる私たちと同じ世界を見ていてもここまで違うものになるのかと殴られたかのような衝撃を受けたのです。
真っ赤なドレスで一生懸命歌うルビー。
それも単なる歌ではなく、万人の心を動かす歌を歌うルビー。
その彼女と歌という表現が1ミリたりとも家族には通じていないという事実。
これ、泣かずに見れる?
彼女がどれだけすごいかを健常者のほかの人から聞いても理解しきれない父親がルビーを理解するために彼女が歌っているときに彼女ののどやあごを触るシーンの優しさ。
こんなことはありえないと思うけれど、バークレーへの入学試験での歌唱を両親に聴かせるシーンも圧巻。
ここまで衝撃を受け、心が動き、泣く映画だとは思いませんでした。

わたしも歌い手の端くれなのでなおさら気持ちが動いたのかもしれないけれど、ぜひぜひ見てほしい作品。
ルビーの先生のベルナドも素敵。
声がきれいな歌手はたくさんいるけれど、歌に意味を持たせ感動をもたらす歌手は少ない。
この映画はフランス映画のリメイクだとこの感想を書くときに初めて知った。
基になったフランス映画も見てみたいと思う。

音楽がない人生は考えられない。
だからこそ「無音の世界」の映画に泣かされました。
監督のシアン・ヘダーは覚えておこうと思います。
agathe

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