くろさわ

コーダ あいのうたのくろさわのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.3
家族であっても究極的に分かり得ない合えない関係、愛はそれを超える力がある。
大小違いはあるけど、家族であっても分かり合えない想いに共感し、考えさせられる映画。


■あらすじ
4人家族で唯一聴者である娘のルビーは常に家族の通訳として親の仕事も手伝っていた。歌うことが好きなルビーは入部した合唱クラブで出会った教師に才能を認められて音大を目指そうとするが、家族には全く伝わらない。


役を演じる俳優は健常者が障害を持つ人を演じることもある。昔は一般的でそれに対して疑問を持つことも少なかったが、実際の立場を知っているかたとしてはより脚色された内容になっていたり、事実と反していることがあり、避難されることも少ない。

しかし、最近では俳優自身が車椅子生活している人が実際の足に障害をもつ役を演じたり(RUN)、今作のように聾者の家族3人について実際の聾者の俳優をキャスティングしていることは映画としても多様化した世界に変わっていると感じた。

作品のタイトルとなっているCODAには二つの意味が存在する。「聾者を親に持つ子供(Child of Deaf Adults)」と「楽曲の終わりを示す音楽記号」二つの意味をうまく表した映画となっている。

ただの家族愛に溢れた内容ではなく、自分のような健常者にはあまり理解されていなかっあ聾者の悩みや葛藤や不安が表現され、思わず世界の見方が変えてくれるよう一作。

耳が聞こえないからこそ、まったく意識しない日常的に発する音への気遣いの無さ、親子の本音で理解させられた聾者の親としての不安、兄としての責任や葛藤、家族だから当たり前としている役割など、深く突きつけられると同時に考えさせられた。
家族なのに物理的に聴者と聾者で分かり合えない関係を表すだけでなく、その高い壁が存在しつつも越えようと挑む姿には感動し、涙した。

今作にあたり、手話をイチから覚え、漁業も経験し、素晴らしい歌声をもつながら聾者と聴者の不安定な境目に立つ役を演じたエミリア・ジョーンズには今後と注目したい。

手話のやりとりが多く、音が重要な要素になる今作はぜひ映画館の環境で見て欲しい。