無音という饒舌
漁師でろうあ者の両親と兄の家族の中で一人だけ健聴者のルビー(エミリア・ジョーンズ)。歌が大好きな彼女が、夢と家族の間で葛藤する姿を描く、ヒューマンドラマ。
フランス映画「エール!」のハリウッド・リメイク。オリジナルも佳作だったが、こちらも非常に評判が高い。実際、ストーリーはほぼオリジナルのままだが、こちらの方がキャラクターが生き生きしている印象がある。特に、ルビーの破天荒な家族、母マーリー・マトリン、父トロイ・コッツァー、兄ダニエル・デュラントは最高。ただ、終盤の展開は、若干性急な感じがした。
この作品は、ぜひ音響のしっかりした劇場で鑑賞してほしい。劇中、ここぞというところで完全な無音になるシーンがあるんだけど、耳が聞こえないってこういうことなんだ、というのが圧倒的緊張感を持って迫ってくるこのシーンは、雑音のある環境では真の意味で味わえない。